【無幻真天楼第二部・第三回】きみぼく
「来たか」
「うん」
お互い【さっき】のことを考えているのは間違いなく
「たまにはいいだろ自分で作ってねぇ飯」
「はははっ」
でもそれをお互いに感づかれまいとしてのいつもの会話
「緊那羅我そっちの肉食いてぇある」
「京助我も肉食いてぇある」
「わかったっちゃ」
「へいへい;」
京助と緊那羅が揃って阿分へ肉を与えた
「あー食った食った」
「満腹ある」
「眠ぃある」
後ろに仰向けで倒れた京助の両横で同じく仰向けで寝転ぶ阿分を緊那羅が食器を重ねながら見て苦笑いをした
「食べてすぐ横になると牛になるらしいっちゃ」
「もーぅもーぅ」
緊那羅が言うと京助が牛の鳴き真似をする
「京助牛になったあるか」
「うぇっ; 腹に乗るな腹にっ;」
「乗るな言われると余計乗りたくなるあるな」
「や め い;」
京助で遊び始めた阿分
「俺もいく」
「へっ?」
その阿分を腹にのせたまま京助が起き上がった
「片付け」
「あ…いいっちゃよ;私が…」
「お前らも手伝えよ」
緊那羅の言葉を遮って京助が阿分にも手伝うように言う
「わかったある」
「手伝うある」
くるんと宙返りをした阿分が人型へ姿を変えるとテーブルの上の残ったおかずののった皿を持った
「よしよし」
それを見た京助が頷くと自分は炊飯器と食器やらが乗ったお盆を持った
「あ…りがとだっちゃ」
「無理すんなさっきまで気ぃ失ってたやつがさ」
足で茶の間の戸を開けながら京助が言う
「これでも一応心配してんだかんな」
最後に小さく付け足された言葉に緊那羅が京助を見た
「早く行くよろし」
「後ろがつっかえてるある」
「へいへい;」
阿分に急かされて京助が廊下に出ると続いて阿分も出ていく
テーブルに残ったのは比較的軽いものだけ
いつもそう
さりげなく不器用に優しい
誰に対しても京助は
「私…」
緊那羅がぎゅっと服を掴んだ
作品名:【無幻真天楼第二部・第三回】きみぼく 作家名:島原あゆむ