【無幻真天楼第二部・第三回】きみぼく
分を肩に乗せた京助が足を止めてしゃがみこんだ
「京助? どうしたあるか?」
分が聞くと
「はぁぁぁぁ…;」
大きな溜め息が返ってきた
「…何しようとしたんだ俺…なぁ?」
「何って何あるか。でっけぇ独り言あるな」
「うっせ;」
のらりと立ち上がった京助が歩き出す
あまりにも自然だったから
何もかもが自然だったから
「…なんなんか…」
ボソッと京助が呟いた
「今度のは独り言にふさわしい独り言あるな」
「あーさいですか;ありがとうございますー」
それ、は例外を除いてはお互いに特別な感情がなければたぶんできないこと
前に悠助が慧喜に向かって言った言葉が頭をよぎった
「…まさか…ねぇ;」
「今度も独り言合格ある。が…京助独り言多いあるな」
分が突っ込んだ
『お前緊那羅好きだろ』
中島に聞かれたことがあった
確かに緊那羅といると和むというか安心するというか…だから嫌いではなく好きなんだと思った
ただどんな【好き】なのか
なんだか前の【好き】とは違うような気がする
「ふー…;」
ぐるぐる考えながら京助が茶の間の戸を開けた
「あら?緊ちゃんは?」
「布団片付けてからくるってさ」
食べ終わった食器を片付けていた母ハルミが聞いてきた
「後アンタと緊ちゃんと阿分だけだから」
「へいよ」
「はらへりある」
分が京助の肩から降りて畳にちょこんと座る
「何か食べたいものあったら京助、とってあげてね」
「ってか戻ればいいじゃん;」
京助が分に言う
「こっちのが楽あるよ。あ、芋食いてぇある芋」
テーブルに前足をかけてパタパタと分が尻尾を振った
「あら緊ちゃん。大丈夫?」
廊下で母ハルミが緊那羅に声をかけた
「あ大丈夫だっちゃ」
緊那羅が笑顔で返す
「今京助と分が食べ始めたから一緒に食べちゃって?」
「わかったっちゃ」
「はらへりある」
茶の間の戸に手をかけた緊那羅が
「…ハルミママさん」
「なぁに?」
母ハルミを呼び止めた
「あの…あとからちょっと聞きたいこと…あ るっちゃ…」
軽く言葉をつまらせながら言った緊那羅
「いいわよ?でもまずご飯食べちゃいなさいね?」
「はい」
緊那羅が茶の間の戸を開けると京助が緊那羅を見た
作品名:【無幻真天楼第二部・第三回】きみぼく 作家名:島原あゆむ