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鎮魂

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あの日。

 あたしは、ばばちゃんとかかちゃんと、生まれたばっかりの弟が始めて「うーー」って言うのを聞いていたの。
 かわいいのよ。
 かかちゃんは、抱っこさせてくれたの。
 くびがすわったから。だって。

 くびって、すわるのね。はじめて知ったわ。
 正座するのかしら? じじは、ごはん食べるときは、正座しなさいって言うよ?

 ととちゃんは、お仕事で港に行ってたの。
 じじは、畑。
 おにーちゃんは、学校。



 最初、何の音か分からなかったの。
 遠くから聞こえてきた音に、びっくりした。
 おとといの、あの時の音だったから。

 近くにいたばばちゃんが、あたしをしっかり抱きしてめて、かかちゃんは、弟をかかえて、はだしでお外にでたの。
 心臓が飛び出すかと思うぐらいにどきどきして、すごい音がして、箪笥が前のめりに倒れてくるし、コタツの上にあったお茶碗もポットも、もうなんだか分からないぐらいに飛び散ってて、もうね。もうね・・・・・・。

 3月11日、14時46分。

作品名:鎮魂 作家名:紅絹