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母から私 私から娘へと ~悲しみの連鎖~ (続)

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 私たち家族四人の生活は、徹さんのお陰で安定した平凡な暮らしが続いていた。
 それから二年後には待望の長男誕生、私から連なる三つ目の命。徹さんはもろ手をあげて喜んでくれた。菜緒が小学校三年の時だった。
 ところがそれを機にして、少しずつ徹さんの態度が変わって行った。
 次女を産む時に感じた不安――もしかしたら、菜緒に対する徹さんの態度が変わるんじゃないだろうか――その時は大丈夫だった。その時の徹さんは、菜緒のことも次女のことも変わらず可愛がってくれた。だから何も心配していなかった――それなのに今回は違っていた。そう、今度ばかりは私の不安が的中してしまったのだった。
 徹さんは長男にべったりになり、菜緒や次女に対する態度が明らかに以前とは違ってきた。まだ次女に対する分にはそうでもないが、菜緒に関しては私の受け止め方が違うのだ。「菜緒に優しくしてくれないのは、自分の子じゃあないからなのか?」と思ってしまう。
 当時親しくしていた友達にある時、思いあぐねて相談してみた。
「自分の子でも、凄く可愛い子とそうでもない子がいるのよ」
 友達にそう言われて、なるほどそう言うものなのかあ、と一度は納得したのだが……。
 ある日のこと。家族団欒で過ごしている時に、菜緒が何気なく言った。
「菜緒のこういう所は、きっとお父さんに似たんだねっ」と。
 それに対して徹さんの返事は、
「似るわけないだろう、血が繋がってないんだから」
 台所の流しで、洗い物をしていた私は思わず作業の手を止め、徹さんを振り返り心の中で叫んだ。
『なんてことを! なんてことを言うんだろう。この人は……』 
 たとえ血が繋がっていなくても、こうして何年も一緒に暮らし、可愛がってきてくれたはずなのに、なぜそんな冷たい言葉が言えるのか。自分の耳が信じられない思いだった。その言葉を菜緒がどう受け止めたのか……。菜緒は何も言わなかったが、私はショックだった。