母から私 私から娘へと ~悲しみの連鎖~ (続)
診察が終わり、病室に寝かされた頃、ようやく徹さんが連絡を聞いて駆けつけてくれた。それまで不安で不安で仕方なかったであろう長男は、やっと安心したのか、徹さんの顔を見るとまた泣き出して、当時の状態を自分ながらに泣きじゃくりながら話すのだった。私は救急車に乗ったのはこれが二度目だったが、長男にとっては初めての出来事で、尚且つお腹の大きなお母さんがいきなり目の前で倒れ、たった一人にされたのだから、その驚きと不安はいかばかりだったろう……。本当に可哀想なことをしてしまった。
入院当日、田舎からお義母さんが出て来てくれた。
「お祖母ちゃんの言うことをよく聞いて、お利口さんで待ってるんだよ」
私は子供たちにそう言いおいて病院へと向かった。
――子供たちは大丈夫だろうか? 慣れないお祖母ちゃんと一緒で……。
不安は残ったが悩んでもどうしようもない。
入院したその日は、手術前の検査が何やらいっぱいあって忙しかった。そして翌日が手術日、四月二日の午後だった。
何の問題もなく無事に手術も終わり、次男は元気な産声を上げた。生まれた我が子を胸の上に置かれ、その顔を見て『やっと……』の思いに安堵した。
ところが、術後の私の身体も落ち着いて、徹さんに連れられて子供たちが見舞いに来た時のこと。話をしていてすぐに異変に気が付いた。長男がどもっている。
「お、お、お、お母さん、ぼ、ぼ、ぼくちゃんと お、お、おりこうにし、し、してたよ」
「……???」
――一体何が起こった!? どうしてどもってるの?――
私は我が子を未知の物体を見るような思いで見つめた。
「――どうしたの? 慌てなくていいから、ゆっくり落ち着いて話しなさい」
優しく言ってみた。それでもやはり長男は、話そうとすると最初の言葉で詰まってしまい、今までのように普通に話すことができなくなっていた。ショックだった。
私は理由を探した。なぜ、なぜ、なぜ……? どんなに考えても分からない。
しかしいくら心配しても悩んでも、今はどうしようもない。少し様子を見て、どうしても治らないようなら病院へ連れて行って先生に相談してみようと決めた。
作品名:母から私 私から娘へと ~悲しみの連鎖~ (続) 作家名:ゆうか♪