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母から私 私から娘へと ~悲しみの連鎖~ (続)

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 それから数日後、母子ともに無事退院して、家に帰ってからやっと原因が分かった。自宅の二階の部屋で、布団に横になって休んでいると、階下でお義母さんと長男が話してる声が聞こえた。
 お義母さんが何か言っている。
「@#$%&¥@%$!」
 それに対して長男が答える――どもりながら。
「お、お、お、お祖母ちゃん、な、な、なに?」
 しばらくじいーっと聞いていた。――そうだったのかあ……。
 お義母さんが話す言葉は東北地方特有のかなり訛りの強い言葉だ。大人の私でさえ意味不明で、首を傾げることがいっぱいある。幼い長男にしたら尚更のことだろう。相手が何を言っているのかが解らなければ返事のしようがない。見ず知らずの外国人に、いきなり外国語で話しかけられるようなものだ。きっと焦って、頭の中もパニックになるに違いない。そんな日が何日も続いたのだから、長男がどもるようになったのも無理からぬことだった。
 私は自己嫌悪に陥った。
 私がこの子を置いて入院なんかしなければ……。
 お義母さんに頼まなければ……。
 そして最後には、次男を産まなければこんなことにはならなかったのに……と。

 お義母さんが田舎に帰っても、長男のどもりは治らなかった。いくら私がゆっくり話させようとしても全く効果はなく、悲しい想いに見舞われるだけだった。思いあぐねた末、小児科で相談してみようと連れて行ってみた。先生が言われるには、そういう場合は何も注意などしないで、本人にどもっていることを意識させない方が良いのだとか。私がやきもきしながら言ったことやしたことは、すべて逆効果だったのだ。その日を境に、私は一切そのことには触れず、ただ黙って見守ることに徹した。その後、大人になった長男は、稀にどもる時もないではないが、周りが気にする程ではなくなった。