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海野ごはん
海野ごはん
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星を見ながら二人で作る物語

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キャンプ場に着いて起こされた。

「えっもう着いたの?」

「じゅうぶん寝てたからよ。ここは久住。九州のど真ん中よ。

ほら、あそこに山が見えるでしょ?」

彼女の射す方向に銀色に輝いた、高い山が見えた。中腹からは煙が出ている。

周りを見渡すと、明るいベージュの枯れた草原だった。広く連なっている。

「あの山に登るのか?結構、高そうだ。雪もかぶってるな」僕は嫌そうに言った。

「ふふ、今回は登らないわ。温泉三昧よ。あそことあそこの煙、あれ温泉の煙みたい」

「昼間は温泉巡りで、夜は星座巡りか。今回は考えたな」

彼女は笑うと、荷物を降ろしだした。

春のキャンプ場は誰もいない。まあ、僕らにとっては場所は関係なかった。

アウトドアも慣れてくると、人が来ない所の方がいい。

今回は水とトイレがあるから、リッチだ。

小さな二人用テントを張り、厳重に防寒対策をした。

枯れ木はいたる所にあった。薪集めは僕の役目だ。そして火起こしも。

どんな濡れた木でも、僕の手にかかれば5分と経たず焚き火にすることが出来る。

彼女が僕を好きな理由は、それが一つだと言った事がある。


彼女はさっそくディナーの準備を始めた。

車がそばにあるので、今回は食料もたっぷりだ。

僕は焚き火の周りに座れる場所とテーブル代わりの石を用意した。

パタゴニアの極寒用の防寒具を着込んだ僕たちは快適な夜を迎えられそうだ。

山の夕闇は早い。そろそろ、あたりは暗くなってきた。

僕と彼女はあたたかいシチューを作り、ワインを用意して乾杯した。

他には熊本産の名物馬刺しや、地元産の野菜をつかった珍しいものが並んだ。

「乾杯!」

久しぶりの彼女と冷たい空気、そして闇の中で暖かいホームを演出する焚き火

空には星が少しずつ瞬きだしてきた。今夜はいい天気になりそうだ。

僕たちはすぐ、ワインを1本開けた。どちらかと言うと二人とも酒豪だ。




最初に寒空で星を見ようと言い出したのは彼女だった。

彼女は小さい時から父親に連れられ、キャンプをたくさんしたそうだ。

焚き火の周りで家族揃って遊んだこと、星を数えて眠ったこと、

夜の中での虫の声や草のにおい、風が木々を揺らす音、遠くで動物の鳴く声

彼女にとってすべてが童話のような世界だったみたいだ。

そんな本格的なアウトドア親父に似ていたのが僕だったのか、彼女は僕を好きになってくれた。

まだ、長くはないけど長距離恋愛も苦にならない。

きっと、彼女のおおらかな大自然的な性格が僕にぴったりはまったのだろう。



夜の闇が濃くなると、寒さも増してきた。

焚き火の炎は星空に吸い込まれるように高く上がり、燃え舞い上がる火の粉は

小さくキラメクたくさんの星達に変化した。

焚き火の周りでは空気の流れが風を生み、どんどん火の粉を天空に舞い上げた。

星は無数に頭の上で輝きだした。

僕と彼女は星を見上げ、僕が彼女を抱きかかえるように一緒に毛布に包まった。

ぱちぱちと焚き火の音以外は何も聞こえない。

僕らはスコッチを飲みながら春の星座を探しあった。

北斗七星を含んだ「おおぐま座」、明るい星スピカのある「おとめ座」

天空頂上近くに「しし座」のレグルスが青白く輝きを放っている。

さすがに都会の灯りがないとこでは、星の数が違う。数百倍はありそうだ。

焚き火の灯りが邪魔になり、火を小さくした。

飲んでる僕らはじゅうぶん暖かい。それに彼女の体温があたたかった。

焚き火の灯りも小さくなると、さらに星の数は増した。

「ねぇ~、私がそばにいなくて淋しくなかった?」

「電話とメールがあるからさ、ほら、それに君もしょっちゅうかけて来るからそうでもないさ」

「浮気しようとか思わないの?」

「もう、歳だしさ。。。それに、君が恐い、ハハッ。。。」

「私が心配じゃない?」

「あ~、心配ばかりだ。まだまだ美人だし、胸も大きいし・・・」

「やん、さわらないでよ、フフフ」

「僕に心配した?」

「いつも、心配してるよ。だから電話する」

「大丈夫だよ、腰がついていかない」

「あら、もうだめになったの?残念。。。」

「君用にとってある。。。」

「じゃ、今夜頂こうかしら、ふふっ。。」

「だいぶ飲んでるしなぁ~」

「あら、もう言い訳。。。」


僕は焚き火の炭をつついた。火の粉が蛍のように宙に舞っては、はらりと消えた。

星の間隙を縫って、人工衛星がゆっくり天空を横断している。

彼女の髪からいい匂いがした。それにつられて

彼女の唇にキスをした。

彼女の甘い吐息が聞こえた。