星を見ながら二人で作る物語
星を見ながら二人で作る物語
毎年、春になると約束していることがある。
アウトドアが好きな彼女は、寒空にテントを張り焚き火をしながら春の星座を見るのが好きだ。
遠距離恋愛の僕たちは必ず3月の初旬に山に登り、星を見る約束をここ5年間続けている。
他にも季節毎、行事がある度会うのだけれど、この春の星座を見に行く僕たちの儀式は大好きだ。
場所を変え見る位置を変え、毎年違う思い出が出来上がる。
今年も、その日が近づいてきた。
「連休はとれた?」彼女は電話で聞いてきた。
「あ~取れたよ。また今年もいけるよ。どこにするか決めた?」
「うん、今年は寒いから九州にしようかと思って・・・大丈夫?」
「あ~ぜんぜん。九州か・・・いいな。あったかいの?」
「雪はないみたいよ。帰りは温泉がいっぱい待っている」
「いいね~、キャンプのあとに温泉か・・・まちどおしい」
「場所はまかせてね、追ってメールする」
彼女は今にも行きたくてうずうずした声で電話を切った。
そして、2週間後、3月の初旬。
僕たち二人は九州の福岡空港で待ち合わせした。
空港前のレンタカーで1週間の予約を取り、さっそく予定の山に向かい走り出した。
空港から見える山並みには雪がなかった。
去年の四国の石鎚山でのキャンプは寒かった。雪がまだ残り、ぶるぶる震えながら見た。
今年は去年を教訓にして、本格的なモンベルの寝袋、パタゴニアの極寒用の防寒具を揃えた。
空港から15分ほどで高速道路に入り、南へ下った。
彼女が運転してるので、行く先も知らない。聞かないことにしていた。
ある程度地理はわかるが、彼女の計画に黙って乗るのも気持ちいいからだ。
さっそくスコッチを瓶からヒップボトルに入れ替えて、ちびりと飲んだ。
「まぁ~、さっそく飲んでるの?」
「いいじゃないか、せっかくの心の洗濯だ。酒が呼んでいる。。。。」
「もう、いい歳なんだから、登るのにばててもしょうがないわよ」
「そんなに登るのか?」
「嘘、今回はあまり登らなくても、高原のいいところにいいキャンプ場があるのよ」
「サンキュー、実は、体力が落ちてね。少し心配してたんだ」
僕はそれを聞くと、スコッチを飲みだした。
高速道路の向こうには低いなだらかな山が見える。
本州とはまた違った形の山の造りだ。連山が少ない。そして大きな山も見えない。
1時間ほどして熊本のICで降りた。
阿蘇の山並みが見えてきた。大きい。そして煙が出ている。
僕らは煙が見える方向に車を走らせ、途中、つまみになりそうなものを買出しした。
高気圧が張り出してきて、ここ何日かは陽気な小春日和が続くそうだ。
今年の春の星座はどうかな。。。。考えてるうちに眠りについてしまった。
作品名:星を見ながら二人で作る物語 作家名:海野ごはん