中年黄昏流星群
隣の彼女は もちろん一人で来てた
マスターは知ってるらしく 僕は初めてだった
「ねぇ~ 黄昏流星群ごっこしない?」彼女が言った
「いいねぇ~ どんな?」僕は笑った
「なんか ときめかせてよ」
「いきなりですか。。。う~ん おもしろい」
突然の難問にチャレンジするのが僕は好きだ 答えを出したくなる
「ロマンチックじゃないと タイトル負けしてしまうなぁ~」
僕は考えた
午前2時の深夜 出会って間もない中年の二人
シチューエーションはバッチリだ
「でも条件がある 君が僕に好意を持っていてくれないと困る」
「いいわよ その条件で。。。」
「そして 笑わない これは演技だから 役者はしらけちゃだめだ」
「了解!」
「じゃ 今からお店を出よう そして手をつなごう」
「いいわよ」彼女は楽しそうにしてる
僕らはマスターに勘定をしてもらい 店の外に出た
そんなに外は寒くなかった
もうすぐ本格的なクリスマスシーズンが始まる
タクシーの赤いバックライトがツリーのライトのようだった
僕はポケットの中に彼女の手を引きよせつなぎ合った
あたたかい手がふれあい ちょっとドキドキした
「恋人同士に見えるかな?」彼女が聞いた
「中年夫婦って見られてるんじゃないの?」
「え~ じゃロマンチックじゃな~い」
「そんな見せかけで 実は さっき知り合ったばっかしなんだというのが
ドラマになるんじゃない」
「そうね 見せかけじゃなく 二人の関係ね。。。」
「知り合ったばかりで こんな事するのが十分ロマンチック
そうじゃない?」
「そうね ちょっとドキドキしてるわ」
「僕のこと好きかい?」
「ふふふ ええ 好きよ」笑いながら彼女は言った 笑顔が素敵だった
「じゃ この道の真ん中でキスしてもいい?」
「。。。。」
「じゃ この道の真ん中で好きだって叫んでもいい?」
「いいわよ でも恥ずかしくない?」
「役者だから 平気さ」
「じゃ 言って御覧なさいよ」
「よし 言うよ!」 大声で言おうとした途端
「だめっ だめっ」と言ってさえぎった
「恥ずかしいからやめて。。。」笑いながらあきれていた
「あなたって 変な人ね」
クリスマスの灯りが綺麗に輝いてる
彼女の楽しそうな顔を見ていると 僕まで楽しくなった