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海野ごはん
海野ごはん
novelistID. 29750
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中年黄昏流星群

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お互い手を離さず腕を組み 海に続く川沿いの道を歩いた

ネオン看板が水面に揺れ ホテル街の灯りがなまめかしく見えた  


「どこに行きたい?」僕が聞いた

「あそこのホテル・・・」

「。。。。。。」


「冗談よ びっくりした?」

「びっくりした。。。演技じゃないかと思った」

「演技だから言えるのよ 普段言えない言葉が」

「それって 言ってみたくなる時があるってこと?」

「あるわよ。。。」

「へぇ~ 妬けるな。。。。」


僕らは大きな橋を渡り 屋台が並ぶ道に出た

今夜はもう すでに客は少なくなり 店をたたむところもあった


彼女は甘えた声で 

「いい男が連れて行く場所は決まっているんでしょ?」と言った

「ああ もう決めてある」

僕は川沿いの道から外れ 

公園の大きなイチョウの木の下に連れてきた

すでに大部分の葉が落ち

あたり一面 街灯に照らされ黄色の世界だった


「雪景色みたい」彼女は喜んでいた

ここのイチョウは 100年以上の年月がたっている

このあたりでは知られた大銀杏だ

大きな木の下に来ると 子供のような気になるから不思議だ


「ここは僕が好きなところの一つ」

「すご~い いきなり別世界ね よく知ってるわね」

「ああ 小さいころからここで遊んでた」

「へぇ~ じゃこの辺のガキだったんだ」

「そういうこと。。。」

僕はイチョウの落ち葉を彼女の肩に乗せ始めた

「なあ~に?」

「おまじない 小さいころやってたんだ」

「どんな おまじない?」

「知りたい?」

「もちろん知りたい」




「このまま 君が僕を好きになってくれますよ~に。。。と」




 僕達は見つめ合って笑った



ビルの谷間にあるこの公園の空は晴れていたが 

街の明かりで流星は見えそうでなかった



「じゃ これで黄昏流星群ごっこはおしまい」僕は言った

「え~ もう終わっちゃうの?」

「ここで終わるから ロマンチックなんだ」

彼女は残念そうな顔をしていた

そして

「そうね。。。まだ長くいたかったけど。。。。ありがと」

「どういたしまして。。。」

僕は彼女のそばに立ち 唇にキスをした

短いキスだった



僕達の流れ星が 流れた 短い閃光を放って

中年のお遊びは これくらいで切り上げた方がいい

僕と彼女はイチョウの木の下でさよならをした

明日以降 会えるかわからない

でも

どこかで もしまた会えたら 続きは長くなりそうだと思った





                                    (完)
作品名:中年黄昏流星群 作家名:海野ごはん