シミツイタ、モノ
手鏡を譲り受けてから、十日あまり経ったある日。
姉に起こされた豪が居間を通ると、母がうろうろとあちこちを歩き回っていました。なにやら物を探しているようです。
「かあさん、どうしたの。なにさがしてるの?」
「ああ、豪。あんたあの手鏡知らないかい?」
「あのてかがみって、はながほってあるの?」
「そうだよ。見なかった?」
そう言われて、豪は記憶を辿ってみます。見当は付きませんでした。
「ううん。みてない」
「そう。どぉこ行ったんだか」
とっても不思議そうに、母は首を傾げました。一応、姉や父とも家中を探し回りましたが、見つかりませんでした。