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Blood Rose

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「おはよう、リディー。母様はまだお休みになられてるから、私が予定を伝えるよ」

優しく微笑んだ彼女らの父親は、女性の紫掛かった髪に手を乗せて口を開く。

「今日は神聖法術の練習をしよう」

リディーは優雅に、
それでいてかわいらしく一礼すると口を開いた。

「レイスは今どこに居るかご存知ですか?」

「昨日の訓練の疲れが取れないようだから、母様が看病しているよ」

リディーは父の言葉を耳にした瞬間、
少しだけ顔が強張ったが平静を装って同意を示した。

「失礼します」

すると、玄関の方から声が掛けられた。

父親がそちらへ向かうと、
使用人に案内されて深々とローブを被った男が入って来た。

「朝早く申し訳御座いません。私は神殿騎士団に所属している者で、娘さんの件でお伺いいたしました」

男は身分証を提示しながら自己紹介する。

「ご報告がありました次女レイスさんの著しい御成長、大変興味深い限りです。是非とも我々にお預け下さい」

父親はそんな報告はしていないと言おうとしたが、
背後から足音が聞こえて振り返った。

「レイスは2階の奥の部屋に居るわ。メイド達に支度をさせているからその後案内してあげて下さいな」

そう言うと再び自室に戻って行く。

母親の思想、行動、全てがこの家では絶対だ。

父親からしてみれば娘を手放すのは心配だったが、
最後に出来る限り盛大に見送ってやろうと部屋に戻る。

今後役に立ちそうな物を掻き集めて戻ると、
支度を済ませたレイスと今まででは考えられない程立派な出で立ちのライアがそこに居た。

「レイス、これを持って行きなさい。きっと役に立つはずだ」

娘達が大人になった時、
社会に出る時に渡そうと毎日寝る暇も惜しんで書いてきた実用書だ。

他にもちょっとした小物を持たせる。

ライアにも同様に生活必需品を数点渡した。

レイスを乗せた馬車を見送ると、
玄関に着けているもう一つの馬車の中に親戚の顔があった。

分家にあたるフラン家の者だ。

何事かと思えば、
その一際豪華な馬車はライアを乗せて静かに走り去って行く。

父親は抗議の声一つ上げずに静かに泣いていた。

作品名:Blood Rose 作家名:日下部 葉