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Blood Rose

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場の混乱で一時期はどうなるかと思ったが、
終幕はあっけないものであった。

無事帰還した騎士団員一同は怪我人の搬送を終え、
大聖堂の裏手で反省会が行われた。

結果的に事なきを得たものの、
反省点は決して少なくは無い。

重苦しい雰囲気から解放された団員達は各自の持ち場へ戻っていった。

そんな中、レイスは裏口から出ていったクリフの後を追って声を掛ける。

「先程の彼らはいったい何者なのですか?」

当然の疑問というところだが、
騎士団員という以前にこれまた人として当然の行いをしたという事でもある。

深入りする必要は特に無く、
何らかの不満や問題を抱えて野党化した人々に衣食住と仕事を与えたというだけだ。

「隣国から逃れてきたようでしたね。怪我人もいましたし武装もそれなりに蓄えていたようですから、前線から敗走した結果あそこにたどり着いたのでしょう」

「なるほど。ところで今回の件ですが私が間に立った事で、双方共に殺すことが目的だったわけではない事を思い出してくれたのでしょうか。レザーヌ枢機教は痛みを分かつ事で理解を得られるとおっしゃっていましたし」

「ええ、間違いありませんね。怪我人への対応も迅速かつ的確でしたし、今回は本当によくがんばってくれました。ただ独断で前に出たのは反省すべきところですが」

確かにレイスが落下さえしなければ何の問題も無く事が進んだだろう。

しかしクリフ自身、そうなった後に攻撃中止を呼びかけても誰の耳にも届かなかった己の無力さを恥じずにはいられない。

「申し訳ないです。今回の反省点を踏まえて枢機教にお言葉を頂くのもいいかと思っています」

そう言ってレイスは静かに歩き出す。


 大聖堂二階のバルコニーでレザーヌ枢機教、クリフ、レイスの三名は顔を会わせていた。

報告は既に別の者が済ませていた為、
すぐに件の出来事についての話題となった。

「話は聞いています。しかしですね、痛みを分かつ事で理解を得るというのは何も矢面に立って争いを鎮めるという事では無くてですね……」

レザーヌは少し言葉に詰まりながらも口を開く。

答えを教えるのは簡単だが、
あえて自ら考える事で学んでもらいたいという意図があるのだろう。

「そうですね、まず一番大事な事です。レイス司祭、貴女はとても強い力を持っています。今後生きる事で何人の命を救えると思いますか」

「……具体的には解りません。けれど生涯人の為に尽くす事を神は望んでいますし、私もそうしたいと思っています」

「ただの模範解答、というわけではないようですね。しっかりとした意志を感じました」

クリフは二人のやり取りを聞いていて自分の未熟さを痛感した。

自分は隊長としての言動に捕らわれすぎていて、
心の奥底から沸き上がる信念とそれによって得られる力に欠けている事に気付かされる。

物事を型に嵌めて正解を追求する事で、
本来のなすべき事を見逃す結果を生んでいるのかもしれない。

「争いとは守る為に起こります。利益を守る為、命を守る為、相手を蹴落とす事で自己を確立させるのです」

二人は視線を少しそらし、考えながら話を聞いている。

単語の意味一つ一つを汲み取ろうと必死だ。

そんな事もお構い無しに頭上を鳥達が飛んで行った。

作品名:Blood Rose 作家名:日下部 葉