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同窓会

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アキ




一、GT−R

 コンビニにセブンスターメンソールと一番搾りを買いに行こうとして、母ちゃんにポストを見て来いと言われた。
 一番搾りが売り切れていて、三分間悩んで黒ラベルを買った。
 コンビニの袋を下げてポストを覗くと『秋山雅弘』宛ての封筒が一つとピンクチラシが大量に入っていた。メールコーナーに置いてあるゴミ箱にピンクチラシを捨てる。捨てる前に、一応、一枚一枚目を通しておく。エレベーターのボタンを押しながら、俺に送られてきた封筒を開けた。
 同窓会。
 色々な顔が浮かんだ。
 バカな幸一。幸一が好きだった、誰だっけ?あの女の子。明るくていつも大声で笑っていた可愛い顔は思い出せても名前が出てこなかった。
 あと、サッカー部のナカジーと野球部のライチ。
 ナカジーとは去年の冬、居酒屋で飲んだ。「ライチはどうしてるんやろ。呼ぼうよ、電話しよう」俺が言うと、ナカジーが答えた。
「あいつ、いま巨乳の女の子と同棲してるからアカン。近寄ったらアカンねん」
「マジで?巨乳?」
「うん巨乳。すげぇ巨乳、だからアカン。すけべがうつるで。近寄ったらアカン」
「うつりたいよ。それ、うつしてほしいよ」
 同窓会の幹事は『三宅秀和』
 少し前に、わざわざ同窓会をしようと思いますが、いつ頃なら集まれますかとお伺いの手紙まで寄こしてきた。それほど全員に集まってほしいのか。
 三宅の顔を思い出す。
 同窓会の幹事を買って出るような男じゃなかった。
 絵が上手だったことをよく覚えている。
 ノートに歴代スカイラインGT−Rを描いていた。
「すげぇ、めっちゃ上手やん。絵、描くの」
 俺がそのノートを見つけて大声を上げた。周りの連中が、何事かと覗き込んできた。三宅はそれが嫌だったようでノートを閉じた。
「隠さんでもいいやん。みんなに見せよう、めちゃ上手いって」
 隠そうとする三宅のノートを取り上げた。三宅は立ち上がり、驚くような勢いで俺からノートを奪い返した。
 俺は三宅に顔を近づけて言った。「なんやねんな、お前、絵がうまいって言ってるだけやろ」
 すぐ近くの席に座っていたライチが立ち上がり、俺の肩をたたいて言った。
「ほっとけ、一人で絵を描いていたいねん。ほっといたれ」
 あのライチが巨乳と同棲かよ。
 俺はマンションのドアを開けた。


二、二学期

 夏休みが終わって、当たり前だけど二学期が始まる。
「久しぶりっ」とか言う相手もいるが、大抵の連中とは部活があるので夏休み中も顔を合わしている。
 野球部の幸一は、夏休みの間、少し伸びていた坊主頭を一気に五厘刈りにしてきた。
「昨日、お父さんにバリカンでやられた」
 笑いながら幸一は言う。みんなが幸一の頭を触った。
 俺が座っている席の後ろに三宅がいて、先生が配るプリントを後ろへ回す時に半袖のシャツから出ている三宅の腕にあざを見つけた。
「どうしたん、それ。痛そうやな」
 三宅は何も答えなかったが、あざは腕だけではなく、背中にもあることを体育の時間の着替えの時に俺は見ていた。
 幸一に、「三宅の背中、めっちゃ大きい『青たん』できてるで」と話した。そのときは、「ふーん」としか答えなかったが、しばらくして幸一が俺に教えてくれた。「知ってる?三宅、いじめられてるらしいで」
「誰に?」
「西脇たち」
 あ、と思った。プールの時に沈められていたことを思い出した。
「あの『青たん』も、殴られたんかな」
「どうやろ」
 一学期の頃は西脇と三宅は仲が良かった。少なくとも俺には、そう見えていた。
 西脇は態度も悪く、先生の注意もふて腐れて聞くようなタイプで、大人しそうに見える三宅とは正反対に思えた。三年生で同じクラスになったとき、西脇から三宅に話しかける姿をよく見ていた。
 幸一の話では、西脇と三宅は小学校の頃、同じ柔道教室に通っていた。よく二人で自転車に乗って道場へ行く姿を見ていたらしい。その頃は西脇も今とは違い、明るく楽しい奴だったそうで、三宅と仲良くコンビニの前でアイスを食べていたりしたそうだ。
  その後、中学生になって西脇と三宅が一緒に過ごすことがなくなった。
  三年生で三宅と同じクラスになった西脇のそばには、レイジとカツがいた。四人で仲良くしているように見えていた。一学期までは。


三、告白

「なに、これ?同窓会?」
 テーブルに置いた案内状を、勝手に母ちゃんが読んで、聞いてきた。
「中学のときの、な」
「ナカジーとか幸一君とかのクラスやな?ナカジー、結婚したんやろ?あんたも早く相手見つけてきぃな」
「世の中の品揃えが悪い。たまにええ感じがいても売り切れてる」
「アホか。休みの日に、家でビール飲んでるか、ゴルフに行ってるか、それだけの男に魅力感じる女なんて、大したことあれへんねんで」
「よう分からん。何が言いたいねん」
「せっかく同窓会してくれるねんから、中学のときの可愛かった子に告白しといで」
 お、
 思わず、声が漏れた。
 いい考えだと、思った。
 あの色白で、モチみたいな肌をした背の低い女の子、名前。
 アイコ。
 藍子だ。
 来るのかな。藍子。急に、どうしようもなく会いたくなってきた。

 
作品名:同窓会 作家名:子龍