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エレウとテリア-よいこのためのグ〇ム童話案内-

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「でも魔女につっこみを入れさせることができたのは収穫だったね」
「ああ、あれは爽快だったな。『誰だよ!』って言ってたもんな」
「スターフ○ックス64の一人プレイをコントローラ奪い合いながら二人でやり続けたあの日々が、まさかこんなとこで生きてくるとはね」
「ガチで殴り合ったよなあ……」
「あのときの痛みが、ぼくたちを成長させてくれたんだね!」
「あのー……」
 背後から声がかかる。双子は同時に振り向く。
「さっきからなにを言ってんだい、きみたち?」
 声の主は、一人の少年である。双子と同じ年頃に見える。
「なんだHくん、まだ起きてたのか。早く寝なよ」
「寝たいのはやまやまなんだけど、きみたちがずっとしゃべってるからさ……そもそもどうしてぼくの名前を?」
「名前くらい簡単さ。なにせぼくらは天使だからね」
「そんなはずはない。天使さまには羽があるっていうじゃないか。でもきみたちの背にはなにもないぜ」
「ちっ……」テリア、小さく舌打ちをして、エレウに耳打ちする。「ねえ、もういいんじゃないの? べつに天使じゃなくたってさあ。子どもが一人や二人消えるくらい、童話の登場人物なら気にしないって」
「万が一ってことがあるだろう。少なくとも、HくんはGちゃんほど、脳内お花畑っ子じゃないと思うぜ」
「純真っていえよ! Gちゃんをバカにするな!」
「はいはい。ともかく、Hくんが寝るまでは、我慢してここにとどまろう。いいな?」
「わかったよ……ったく、エレウは口が悪いからなあ……ぶつぶつ」
「……外面よくて性格悪い方が悪質だろ」
「え? なにそれ、誰のこと?」
「さあな」
 双子、火花を散らし、にらみ合う。
「ちょ、ちょっときみたち」
「なんだいHくん。邪魔をするつもりかい?」
「邪魔って……ケンカはよくないよ、ケンカは」
「聖人君子ぶるのはやめなよ。きみだってGちゃんとケンカくらいするだろ?」
「しないよ」
「嘘だね」
「ほんとうだって、ケンカなんか一度もしたことないよ」
「白々しいなあ。歳の近い兄弟ってのはケンカが仕事みたいなものなのに」
「そんなこと言ったって。Gはなにをされても怒らないんだ、ケンカなんかそもそもできるはずがない」
「Gちゃん、ぼくが天使ならきみは女神だね……」
 テリアが深々と息をつく。エレウは呆れ顔でテリアを押しのけ、尋ねる。
「ねえHくん。お父さんってどんな人?」
「お父さん? きみはぼくたちのお父さんのことまで知ってるのかい?」
「天使だからね」
「……。お父さんは、やさしい人だよ。もうすこし、男らしいところがあればいいな、とは思うけど」
「ふうん。そこは変わらず、か。思い過ごしだったかな……」
「……?」
「いや、なんでもないんだ。さて、そろそろおしゃべりはやめて、ぼくらも寝るとしようか、テリア」
「ふぁーい」
「あれ、もう仲直りしたの?」
「長ったらしいケンカは大人のやることさ。きみのご両親みたいにね。おやすみHくん」
 小屋のなかは静寂に満たされる。いくばくかの時が流れ、寝息が聞こえだすと、エレウが体を起こす。
「いくぞ、テリア。……ってほんとに寝てんじゃねーか!」
「むにゃむにゃ……アワビ……」
「アワビ……?」
「バナナ……」
「おい! 起きてんだろ!」
 テリア、体を起こす。
「あははー」
「あははーじゃねえよ。お前そろそろ台詞に取り消し線引かれるぞ」
「(自主規制)ならもうやられたけど。ぼく自身は全然規制したくな(自主規制)。うわまた!」
「自業自得だ」
「ていうかエレウ、どんどん言葉遣いが荒くなっていくねえ。最初の方はよかったのに」
「誰のせいだよ」
「で、どうするの? お宝は?」
「予定通り、回収だ」
「そのあとはトンズラ?」
「いいや、もう一度ここに戻ってくる」
「なんで!?」
「閉じこめられてるはずのぼくたちが勝手にいなくなったら不自然だろ。物語的に」
「えー……」
「そうげんなりした顔するなよ。大丈夫さ、じきにGちゃんが魔女を釜のなかへ突き落して、骨になるまで燃やしつくしてくれるから」
「ぼくもGちゃんに萌やしつくされた……げふんげふん。でもさ、宝部屋に行ってもまた魔女に見つかっちゃうんじゃないの?」
「それなら心配いらないさ。こっちこっち」
 エレウ、テリアを手招きする。大きな壺。蓋をとる。白い液体が入っている。
「これはなに?」
「練乳だね」
「どうするの?」
「こうするのさ!」
 エレウ、壺を抱えて中身をテリアにぶちまける。
「わーっ!」
「静かにしろ! Hくんが起きちゃうだろ!」
「だって! なんのつもりだよ!」
「魔女の鼻をごまかしてやるのさ。魔女の家のなかは甘いにおいでいっぱいだろ? ぼくらが練乳をかぶってしまえば、砂糖のにおいで区別がつかなくなるよ」
「だからってさあ……よりによって練乳って。ひわいすぎるでしょ」
「視聴者サービス」
「一部の特殊な性癖をお持ちの方しか喜ばないよね……」
「女装でもしてくればよかったな。さあ次はそっちの番だ」
「ぐへへ……思いっきりぶっかけちゃうぞ」
「ノリノリだな」
テリア、ぶっかける。
「よし、行くか。おっと、そこに手頃な麻袋があるな。持っていこう」
「べとべとしてきもちわるいなあコレ」
 双子、手を合わせる。跳ぶ。
 双子、着地する。宝部屋。てきぱきと宝(真珠や宝石)を袋に詰めこむ。
「これで全部かな。そんで、これどうするの? 持って帰っちゃう?」
「いや、捨てる」
「捨てる!?」
「ああ。といってもただ捨てるんじゃない。兄妹の家まで、道に沿って落としていくんだ」
「Hくんが行きにパンを落としておいたみたいに?」
「そう。兄妹が帰りにたどれるようにね」
「どうしてわざわざ? そんなことしなくたって、もとの話では兄妹はちゃんと家に着くんでしょ?」
「もちろんそうだけど、帰り方に問題があってね。まったくの偶然で帰れちゃうんだな」
「童話ってそんなもんじゃない? ご都合主義」
「いいやぼくは認めないぜ。森に関して『自力じゃ脱出できない』って条件は、この話においてはけっこう大事なポイントのはずだ。いくら童話だからって、そこを偶然で片付けちゃうのは甘すぎる」
「エレウは細かいなあ……でもさあ、宝石が道に落ちてるってのもご都合主義じゃない?」
「そこについては、Gちゃんがうまいこと伏線を張ってくれたよ」
「?」
「とにかく、ぼくらはやることをやっちまおうぜ」


「やあやあみなさんこんにちは」
「双子のエレウとテリアだよ」
「ぼくたちはあのあと、仕事を終えて家畜小屋へ戻りました」
「それから、見事魔女を成敗したGちゃんに助けだしてもらったよ」
「HくんとGちゃんは手をとりあって帰っていったね」
「そして、無事家に到着した」
「けれどもおかしなことがあった」
「ぼくたちが必死で道に落としてきた宝石。なぜかそれをGちゃんが持っていたんだな」
「しかもぼくたちとHくんが小屋から出たとき、既にね」
「Gちゃんは『魔女の家で見つけた』なんて言っていたけど、そんなはずないよねえ」
「まったくどういうことだろう。……おっと、帰ってきたようだ」