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エレウとテリア-よいこのためのグ〇ム童話案内-

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「せめて最後まで英語でがんばれよ」
「そ、それでなにしてるの、あれ?」
「水くみさ。要するにGちゃんは雑用係なんだ」
「なるほど。Gちゃんは食べられないのかな? 女の子の方がおいしそうだけど。あ、魔女からしたら男の子の方がおいしいか」
「おい」
「AHAHA」
「……質問はもういいか?」
「うん。で、これからぼくら、なにをするの?」
「それは……ちょっと待て、考える」
 三十秒後。
「よし決めた。ぼくたちはこれから、あの家に侵入する。そして魔女のお宝を奪うんだ」
「お宝?」
「ああ。兄妹はまあ、予定調和的に魔女をやっつけるんだけど、そのあとお菓子の家を探索して、お宝を見つけて持って帰るんだ」
「それをぼくらが先回りして横取りしちゃうと」
「そういうこと。どうだい?」
「サイコーだよエレウ、文句なし!」
「それじゃ行こうか」
「行くってどこへ?」
「Gちゃんの部屋」
「どこだかわかるの?」
「二階の北側の部屋。下調べはしておいたさ」
「さっすがエレウ!」
 双子、手を合わせる。跳ぶ。
 双子、着地する。狭い部屋。Gが床で寝ている。エレウが近寄り、とんとん、とGの肩をたたく。Gは目を開け、双子の姿を見ると驚いて声を上げようとするが、すぐさまテリアがGの口をふさぐ。
「しーっ、しずかに。こわがらないで、味方だから」
 Gが落ち着くと、テリアは手を離す。
「だ……だあれ、あなたたち? どこから入ってきたの?」
「きみのお兄さんを助けにきたんだよ」
「ほんとう?」
「ほんとうだとも」
 Gはぱっと明るい顔になり、手を組み、顔を伏せて言う。
「神さま、ありがとうございます。いまわたしのもとに、天使さまがおこしになりました」
「天使さまだって。どっちかっていうとぼくら、悪魔じゃない?」
「ぼくまでまきこむなよ、テリア」
「ああ、ずっとお祈りをつづけていたかいがありました。ほんとうに、ありがとうございます」
「いやあそれにしても、近くで見るとびっくりするくらいかわいいなあ、Gちゃんは。じいちゃんなんて言って悪かったよ。きみみたいな清楚な女の子、タイプなんだよね。どうかな、お兄ちゃんを無事救出できたあかつきには、童話の掟にしたがってぼくと結婚するってのは」
「天使さまと結婚だなんて……とってもありがたいお話ですけど、ごめんなさい。わたし、大きくなったらお父さんと結婚するんです」
「フラれたな」
「くっそう……あんなダメ親父のどこがいいんだGちゃん、君たちを捨てたんだぜ?」
「お父さんを悪くいわないで!」
 双子、驚いてGを見つめる。Gも自分の声に自分で驚いている。
「ご、ごめんなさい。でも、わかっていただきたくて。お父さんはやさしい、すてきな人なんです」
「いや、ぼくの方こそ悪かったよ。……しかし納得いかないな。どういうことだろう、エレウ?」
「荒野に咲く一輪の花はやけに美しく見える。そういうことだよ」
「どういうことだよ!」
「お母さんは普段のジャイアンで、お父さんは劇場版のジャイアン」
「納得した」
「あの……」
「おっと、ごめんねGちゃん。わけのわからないことばかり言って。本題に移ろう。ぼくたちがここに現れたのはね、きみにお願いがあるからなんだ」
「お願い?」
「そう。時間稼ぎをしてほしいんだ。ぼくたちがお兄ちゃんを助けだすあいだ、きみは魔女を見張っておく。寝ているか、部屋にこもっているならそれでいいけど、もし動きだしたら、話しかけて注意をひきつける。できるかい?」
「お兄ちゃんのためなら、がんばります」
「よし。それじゃ行こうか、テリア」
「うん。あ、Gちゃん。ぼくたちこれから消えるけど、それは天使だからできることなのであって、なにもぼくたちにテレポート能力が備わっているわけではないからね。全然不自然じゃない、きみが魔女をやっつけるのと同じくらい物語的に自然で当然なことだから。そこんとこよく覚えといてね」
「普通にドアから出ていくつもりだったのにおまえは余計なことをぺらぺらと……」
「だって歩くのめんどいじゃん。エレウはお宝の在り処も知って――」
 エレウ、テリアの口をふさぐ。
「じゃあねGちゃん。魔女の方はまかせたよ。おたがい、健闘を祈ろう」
 双子、手を合わせる。跳ぶ。
 Gは口をぽかんと開けて、双子がいなくなった空間をながめている。
 ふいにGは「あ」となにかに気づく。口に手を当て、つぶやく。
「どうしましょう」


 双子、着地する。うす暗い部屋。
「ここが宝部屋?」
「そうだよ」
「さっきから思ってたけど、甘いにおいでいっぱいだね、この家」
「まあ、お菓子の家だしね」
「そういえばそうだった。で、お宝は……あったあった。でっかい箱がひい、ふう、みい……いっぱい。鍵はかかってないのかな?」
「かかってないはずだ。その方がストーリー進行スムーズだし。さあ早く、回収しよう。Gちゃんががんばってくれてるうちに」
「ああ、Gちゃん! 心配だなあ。うっかり食べられちゃったらと思うと……じゅるり」
「よだれ」
「これは失敬。お菓子の家よりGちゃんの方が(自主規制)」
 双子、箱に近づく。開ける。
「ごまだれ〜♪」
「なんだそれ?」
「宝箱開封といえばこの効果音でしょ!」
「そうなのか」
「知らないの? エレウは勉強不足だなあ。本ばっかり読んでないでゲームもしなさい!」
「それはなんかおかし――」
「ねないこだれだあ〜?」
 突如聞こえてきたしわがれ声。階段をおりてくる足音。
「「!!」」
 双子、あわてて箱の陰に隠れる。
「どういうこと、エレウ? Gちゃんは?」
「……あ。鍵だ」
「あー……そっか。そりゃそうだ。魔女だって獲物の部屋に鍵くらいかけるよね。ぼくらおバカすぎじゃん!」
「後悔先に立たずだ。逃げるぞ!」
 双子、手を合わせる。同時に、部屋のドアが開く。魔女が入ってくる。
「……って立てないじゃん! どうすんのさエレウ! 立てないと跳べないよ! でも立ったら見つかるよ!」
「おちけつ、いやおちつけ。やりすごすんだ。だいじょうぶ、たしか魔女は目が悪いって設定だった。この暗さなら見つかりっこない。だからおつつついて――」
「こんばんはあ!」
「「ひぃぃ!!」」
「おやおやかわいいどろぼうだこと。こいつは食わずに殺すのはもったいないねえ、ひひひ」
「ど、どうして……」
「どうして見つかったのかって? あたしゃ鼻がきくんだよ」
 魔女は赤い目を細めにいっと笑う。エレウが「忘れてた!」と叫ぶ。
「引用元に書いてあったんだ! 『いったい、魔女というものは、赤い目をしています、そして、遠くが見えないものです。けれども、動物とおんなじに、鼻がよく利くもので、人間どもが近よってくると、においで、それがわかるのです』って!」
「やめてよエレウ! 解説しながら死ぬなんてこのうえなく脇役っぽいよ! しかも無駄に長い!」
「なあにわけのわからんことを。まだ殺さんと言っとろうに。おら、こっちへ来な!」
「「アンドルフおじさーん!!」」
「誰だよ!」


「というわけで、ぼくたち囚われてしまいました」
「家畜小屋に入れられるなんて、屈辱のきわみだね」
「まったくだ」