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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【無幻真天楼第二部・第二回・弐】小さなこいの唄

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フォオオオオ…ン

その足音と共に聞こえ始めた宮司の声
「宮司の声…気のせいじゃなかったみたいですね…宮司に追いかけられているということは…」
廊下に出た乾闥婆が足音と宮司の声がした方向を睨む
「宮の上層まで来るなんて…一体…」

フォオオオオ…ン

大きくなる宮司の声に乾闥婆が足を一歩引いて構えた
「来る…」
足音がすぐ近くに聞こえ乾闥婆の顔が険しくなる
角の向こう
姿はまだ見えない

フォオオオオ…ン

宮司の声も大きく近くなった

チキチキチキという音が背負っている鞄から聞こえて烏倶婆迦が足を止めた
「ニオイニオイ」
ひょこっと鞄から顔を出したのは烏倶婆迦が作ったという烏倶婆迦そっくりな小さな機械人形
「コッチコッチ」
ピョイと鞄からとびたしたその人形がカチャカチャと走り出した
人形が走る方向に烏倶婆迦もついていく

フォオオオオ…ン

すぐそばで聞こえた宮司の声は気にせず人形の後をついていく
「ケンダッパケンダッパ」
カチャカチャ歩く人形の言葉を聞くや否や人形を抱き上げ烏倶婆迦が走り出した
突き当たった廊下は左右に分かれている
走って来た烏倶婆迦がブレーキをかけ止まると右を見てそして左を…
「烏倶婆迦…?」
向きかけて名前を呼ばれた
「どうしてあなたが…」
「おいちゃん乾闥婆に会いに来た」
「ケンダッパケンダッパ」
いつもの格好とは違う乾闥婆に烏倶婆迦が駆け寄る
「宮司はあなたを追ってたんですね…っわ;」
烏倶婆迦が乾闥婆に抱きついた
「お母さんは優しくてあったかい…」
「え?」
「オカアサンオカアサン」
ぎゅっと抱き締められ乾闥婆が烏倶婆迦の頭を無意識に撫でる
「お母さん…」

フォオオオオ…ン

呟いた乾闥婆が宮司の声にハッとして烏倶婆迦を部屋に押し込むと戸を閉めた
「これだけ宮司が騒いでいるならおそらく近衛にも届いて…」
「乾闥婆」
烏倶婆迦がまた乾闥婆に抱きつく
「どうしてここに来たんですか!!あなたは空の…」
「おいちゃん乾闥婆に会いに来た」
「僕に…? どうして…」
「会いたかったから。おいちゃん乾闥婆が好き」
「スキスキ」
乾闥婆に抱きつく烏倶婆迦の周りを人形がチキチキと躍りながら回っている
「乾闥婆は優しくてあったかいお母さんも優しくてあったかいって。おいちゃん乾闥婆が好き」
「烏倶婆迦…」
甘えるように頭をすりよせる烏倶婆迦
「烏倶婆迦…僕はあなたのお母さんでは…」
「知ってるよ。お母さんは女だって。乾闥婆は男だって。でも乾闥婆は優しくてあったかいからおいちゃん乾闥婆が好き。ハルミママと同じ感じがする」
「僕が…お母さん…母親…」
乾闥婆が目を閉じて唇をキュッと噛んだ
「…とにかく奥へ…宮司は部屋の中までは入ってこれないはずです」
抱きついていた烏倶婆迦を少し離して乾闥婆が言う
「宮司をやり過ごしたら近衛に知られる前に戻ってください」
烏倶婆迦の手を引いて乾闥婆が寝台のある奥の部屋に向かった
広い廊下を足音を響かせて走る迦楼羅が壁に手を付きハーハーと荒い息を整え顔をあげた
「どこへ行ったのだあのたわけめ…;」
宮司の声は聞こえなくなっていた
「近衛に…知られていないといいのだか…」
脱げばいいであろう上着を邪魔臭そうに後ろへやると早足で廊下を行く
そしてはたと足を止めた
「そういえば烏倶婆迦のやつ…乾闥婆に会いたいと言って…まさか…」