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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【無幻真天楼第二部・第二回・弐】小さなこいの唄

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「ねぇ乾闥婆どこ?」
「黙って走らんかっ!!;」
「走ってるだけじゃ乾闥婆に会えない」
「いいから今は走れ!!;」
「乾闥婆に会いたい」
「や か ま し い っ!!;」
噛み合ってるようで噛み合ってない会話が続く
「ねぇ」
「なんだっ」
「迦楼羅は乾闥婆が好きなの?」
「はっ!?; だっ!!;」
突然聞かれて迦楼羅が驚きそしてコケた
「な…っ;」
バッと顔をあげた迦楼羅がしばらく黙ってもそもそと起き上がった
「…ワシは…」

フォオオオオ…ン

遠くで聞こえた宮司の声にハッとした迦楼羅が後ろを見てそして前を見る
「しまった烏倶婆迦っ!!;」
さっきまで並走していた烏倶婆迦の姿はどこにもなく
「っ…だあああもうっ!!;」
一人大声をあげた迦楼羅が走り出した
「宮司に見つかれば近衛がくる…近衛に見つかれば…っ…」
走りにくそうな服をたくしあげて走る迦楼羅が苦い顔をした


積み上げられた本
並んだ瓶には細かくされた薬草らしきものが入れられていた
調合に使うのか色々な道具が綺麗に並べられている
その部屋の隅にある寝台が少し膨らんでいた
その膨らみが動くとピョコンと出てきたのは乾闥婆のトレードマークともいえるあのピョン毛
「宮司…?」
いつもは高い位置で束ねている髪の毛はほどかれてまさに寝起き姿の乾闥婆が目をこすった
「少し…寝過ぎました…」
寝間着なのか白く長い着物を一枚着ただけの乾闥婆
「気のせい…? でもたしかに宮司の声がしたような…」
靴を履くと積み上げられた本の横を通り大きな戸の前まで来た乾闥婆がゆっくり戸を開けた
無駄に広く長い廊下には宮司どころか人の姿すら無く
「…気のせいですね…きっと」
そう呟き戸を閉めようとした乾闥婆の耳に足音が聞こえた
「足音…? 誰か来る…」
乾闥婆が閉めかけた戸を開けて廊下に体半分出す
近づいてくる足音