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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【無幻真天楼第二部・第二回・弐】小さなこいの唄

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「ねぇ」
「なんだッ;」
烏倶婆迦の手を引いて走る迦楼羅に烏倶婆迦が声をかけた
「どうして逃げてるの?」
「はっ!?;」
「迦楼羅はどうして逃げてるの?」
「どうして…って…たわけッ!; そんなもの宮司が追いかけてくるからに決まっているだろう!!!」
走りながら迦楼羅が答える
「迦楼羅は天だから逃げなくていいと思う」
「それはっ…」
「宮司が追いかけるのは天以外だから迦楼羅は逃げなくていいのにどうして逃げてるの?」
脱げそうになる帽子を押さえながら走る烏倶婆迦が更に聞く
「それにおいちゃんは…」
「…いいから走らんかっ!!」
少しの沈黙の後迦楼羅が怒鳴ると走る速さが上がった

フォオオオオ…ン

宮司の声が響く
「ねぇ」
「なんだッ;」
烏倶婆迦がまた迦楼羅に呼び掛けた
「乾闥婆に会いたい」
「まだいうかッ;」
「だっておいちゃん乾闥婆に会いに来たんだ。だから会いたい」

フォオオオオ…ン

宮司の声が少し大きく聞こえた
「何故そんなに乾闥婆に会いたいのだ」
今度は迦楼羅が烏倶婆迦に聞く
「お母さんは優しくてあったかいんだって」
「はっ? お母さん…?」
「慧光が教えてくれた。お母さんは優しくてあったかいって。乾闥婆も優しくてあったかかったんだ」
表情が変わらないまま烏倶婆迦がうつむいた
「ハルミママも優しくてあったかかった…お母さんは優しくてあったかいんだ」

烏倶婆迦は乾闥婆に母親を求めているのだろう
なんだかんだ言ってまだ幼い烏倶婆迦の手は今の自分と変わらない大きさ
元の姿に戻ればその手がどのくらい小さいのかはわかる
「乾闥婆が母か…」
「おかしい?」
少し微笑み呟いた迦楼羅に烏倶婆迦が聞いた
「いや…おかしくはない…ただ…そんな未来もあったのかもしれんのだな…」
迦楼羅の表情が曇る
「乾闥婆ってお母さんになれるの?」
「…乾闥婆は男だ…乾闥婆はな」
何故か【乾闥婆】と二回繰り返した迦楼羅

フォオオオオ…ン

その声を宮司の声がかき消した