【無幻真天楼第二部・第二回・弐】小さなこいの唄
フォオオオオ…ン…
二つ向こうの廊下から宮司の声が聞こえた
息を潜めて壁に背をつけ宮司が遠くなるのを待つ迦楼羅と烏倶婆迦
宮司の声が聞こえなくなるとほぅっとため息をついた迦楼羅が烏倶婆迦を見た
くいくいと帽子を直していた烏倶婆迦が視線に気づいて迦楼羅の方に顔を向けた
いつもお面をつけている烏倶婆迦の素顔を見たことはない
「何?」
表情の変わらないお面の顔のまま烏倶婆迦が首をかしげた
「いや…;」
迦楼羅が顔をそらす
「乾闥婆に会いたい」
「会いたいといってもだな;」
「乾闥婆の部屋どこ?」
「ワシの話を聞かんかっ;」
フォオオオオ…ン
小声で怒鳴った迦楼羅の声に続いて宮司の声が一本向こうの廊下から聞こえると迦楼羅が烏倶婆迦の手を引っ張って走り出した
「おいちゃんなら大丈夫だよ迦楼羅」
「何がだっ;」
「おいちゃん特別だから」
「はっ?;」
走りながら烏倶婆迦が言う
「宮司が追いかけてくるのは逃げてるからだから」
「それもあるがお前は空の…」
フォオオオオ…ン
真後ろから聞こえた宮司の声
「っ…;こっちだっ!!」
十字にわかれていた廊下の向かって左に迦楼羅が烏倶婆迦を連れて曲がった
作品名:【無幻真天楼第二部・第二回・弐】小さなこいの唄 作家名:島原あゆむ