【無幻真天楼第二部・第二回・弐】小さなこいの唄
「あれ? 烏倶婆迦どうしたんだっちゃ?」
買い物袋を下げた緊那羅が廊下の真ん中に立っていた烏倶婆迦に聞いた
「お父さんとお母さん…」
「え?」
「おかえりある」
「おかえりある緊那羅」
足を止めた緊那羅の両肩に素早く上ってきたのは阿分
「ただいまだっちゃ」
「腹減ったある」
「はいはい」
烏倶婆迦を気にかけつつ緊那羅が台所に向かう
「おかえり」
「あ…ただいまだっちゃ」
「主ある」
「すっかり緊那羅に懐いたな」
竜之助におかえりと言われて少し驚いた緊那羅
阿の首元を指で撫でながら竜之助が緊那羅を見た
悠助に似た目元
でもどうしてか京助とも重なるのはやはり父親だからなのか
「あらあら廊下混んでるのね」
母ハルミと悠助が来て言う
「緊ちゃんの荷物持ってあげるとかしなさいよアンタはもう」
「僕手伝うー」
「ハッハッハ仕方ないな」
母ハルミに言われて竜之助が緊那羅の持っていた買い物袋を持って歩き出した
ワイワイしながら台所に向かう悠助たちの背中を見ていた烏倶婆迦がきゅっと拳を握りしめた
作品名:【無幻真天楼第二部・第二回・弐】小さなこいの唄 作家名:島原あゆむ