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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【無幻真天楼第二部・第二回・弐】小さなこいの唄

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なかなか手をつかまない烏倶婆迦の服を乾闥婆がひっぱる
「おいちゃんは大丈夫なんだ。だから乾闥婆は逃げて」
「駄目ですっ…」
ぐいっと力をいれると近衛が烏倶婆迦をするんと放した
乾闥婆が烏倶婆迦を抱くと床に降りる
「逃げて乾闥婆。近衛が気づいちゃった」
「何にですか!!」
「おいちゃんから力は吸えないってこと。だからおいちゃんを放したんだ」
「あなたから力を吸えない…?」
烏倶婆迦の手を引き走る乾闥婆が聞くと烏倶婆迦が頷いた
「だから大丈夫だっていったの」
「それはどうい…」

シュン

「しまっ…」
近衛が乾闥婆の足に巻き付くと乾闥婆の体を持ち上げる
「乾闥婆!!」
烏倶婆迦が高く持ち上げられていく乾闥婆にしがみついた
「烏倶婆迦! 逃げてください!! 烏倶婆迦ッ!!」
乾闥婆が言ってもしがみつく烏倶婆迦は返事をしない
どこまでも持ち上げられる乾闥婆が烏倶婆迦を抱き締めた
「乾闥婆…」
「烏倶婆迦…僕の羽衣をまとって下に…ね?」
近衛に力を吸われているのか疲れた様な笑顔で乾闥婆が烏倶婆迦に言う
「いやだ。おいちゃん嫌だよ乾闥婆」
「はや…く…」
「乾闥婆!!」
烏倶婆迦を落とさんとしている乾闥婆の腕の力が弱まり烏倶婆迦の体がずり落ちていく
「乾闥婆!! 乾闥婆!!」
「っ…」
弱まる力をふり絞って乾闥婆が片手で自ら羽衣をほどくと烏倶婆迦の体に纏わせた
「け…」
そして最後の力で烏倶婆迦を突き放す
烏倶婆迦の体が羽衣の力で浮いているのを見た乾闥婆が微笑んだ
「乾闥婆!!」
烏倶婆迦が叫ぶと近衛が一斉に乾闥婆に向かっていく
ぐったりとした乾闥婆の目は閉じたまま
乾闥婆のもとへ行こうと烏倶婆迦がじたばたするも前には進まず
黒い近衛に埋もれていく乾闥婆をただ見ているしかなく
「乾闥婆!! 乾闥婆乾闥婆っ!!」
名前を呼んでも返事がない
無音の中乾闥婆が黒に消えていった