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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【無幻真天楼第二部・第二回・弐】小さなこいの唄

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バンッ!!

と勢いよく部屋の戸が開けられた音と今話題にしていた名前の主の声
「う…ぐ…ひっ…へっくしっ!!;」
「迦楼羅くしゃみした。噂したから?」
ズビーっと鼻を啜る音
戸を開けた音に反射的に立ち上がっていた乾闥婆がゆっくりと歩き出した
ズッと鼻水を啜った迦楼羅にふっと影が落ちてきた
見上げる迦楼羅
「乾闥婆…」
「部屋に入るときには一言断ってくださいといつも言っていましたよね?」
「い…いや;これはだな…」
部屋着で髪を解いた姿の乾闥婆を見た迦楼羅が慌てる
「その…なんだ…すま…ふがっ;」
「…鼻水出てますよ」
てっきりしばかれると思っていた迦楼羅の鼻水を乾闥婆が拭った
「そんなに慌ててどうしたんですか? 竜田揚げでも食べたくなりました?」
乾闥婆が聞くと迦楼羅がハッと我にかえる
「そうだった!! 烏倶婆迦が」
「おいちゃんが?」
「烏倶婆迦がお前に会いたいといって宮に来ているのだが」
「うん」
「ちょっと目を放した隙に…いなくなってしまってだな…それでお前のところに来ていないかと…」
「そうですか…。では迦楼羅は烏倶婆迦を探していたんですね。…だそうですよ烏倶婆迦」
乾闥婆の後ろにいる烏倶婆迦に気づかず今ここに至る経緯を話していた迦楼羅が烏倶婆迦に気づくと固まった
「遅いよ迦楼羅」
「な…っ…おま…;」
口をパクパクさせて迦楼羅が烏倶婆迦を指差す
「乾闥婆のお茶おいしかったよ」
烏倶婆迦が乾闥婆の首に抱きつくと迦楼羅の眉毛が上がった
「烏倶婆迦」
「何?」
「迦楼羅にお礼いわないと駄目ですよ。貴方を探してくれていたんですから」
「わかった。ありがと迦楼羅」
「偉い偉い」
頷き迦楼羅にお礼を言った烏倶婆迦の頭を乾闥婆が撫でた
お礼を言われた迦楼羅が何処と無くムスッとしたまま立ち上がる
「宮司が去ってまだ近衛が来ていない今のうちにさっさと帰らんかっ!!」
「やだ」
「なっ…;」
少し怒鳴る様に言った迦楼羅に即答した烏倶婆迦
「おいちゃんまだ乾闥婆といたい」
「お…まえは自分のおかれている状況がわかっているのかっ!!;」
「迦楼羅落ち着いてください」
乾闥婆が立ち上がった
「そんなに大声で言わなくても通じますよ。ね? 烏倶婆迦」
「うん」
「っ…;」
乾闥婆に抱きつきながら返事をした烏倶婆迦を見て迦楼羅が言葉を詰まらせた
「とにかく…近衛が来ないうちにだな…」
「大丈夫だよ」
「な に が だ!! 宮司はともかく近衛に見つかれば間違いなく無事ではないんだぞ!?」
「迦楼羅」
また怒鳴った迦楼羅を乾闥婆が見ると迦楼羅がフンッと顔をそらす
「僕も一緒にいきますから」
「本当?」
烏倶婆迦が見上げると乾闥婆がにっこり笑って頷いた
「着替えるので外で待っててください」
「わかった」
「…勝手にしろ」
迦楼羅がバサッと上着を翻して部屋から出ると烏倶婆迦も駆け足て迦楼羅の後を追う