出会いは衝撃的に(前半)
彼は美絵という名の女性に恋をしてしまったらしい。その兆候がレントゲン写真に写ることなどありえないのに、彼は少しだけ心配をしている。
レントゲンの撮影が終わってからもう一度彼が医師の居る小部屋に入ったのは、浅野の住まいの近くの病院への紹介状を受け取るためだった。
その整形外科は町医者だろうか。歯科と内科もある病院だと判った。つまり、病院名が院長らしき人物の固有名詞に続けて「整形外科歯科内科」となっていた。診断書は明日来院した際に渡すと云われた。
診察券を受け取った浅野が病院の外で警察署に携帯電話で連絡すると、明日出頭することを約束させられた。診断書が必要なのだという。
明日も警察署で再び村田美絵と顔を合わせることになるかも知れないと、浅野は思った。それが実現するためには、彼女の予定を知ることが必要だと思った。
「事故の相手は、明日の何時にそちらへ?」
「今おられますが、お電話代わりますか?」
「いえ、その必要はありません」
慌てて応えた浅野の鼓動が再び激しくなった。
追突されなければ明朝まで仕事をすることになっていた。それが大幅に変更になった。これから目黒駅前に戻り、車を運転してタクシー会社の車庫まで移動する。そして、今日の日中の僅かな売上金を納金することになる。
作品名:出会いは衝撃的に(前半) 作家名:マナーモード