出会いは衝撃的に(前半)
病院の前で浅野は、待つこともなく流しのタクシーの一台に乗車することができた。空車タクシーが数珠つなぎの状態で走って来たからだった。
「目黒駅の西口までお願いします」
最寄駅へ乗りつけてから電車で移動しようとは思わなかった。そうすると何倍もの時間が掛かるからだった。
「はい。目黒駅ですね」
いつもは運転席から見る風景が、後部座席から見るとかなり雰囲気が違う気がする。
「信号待ちをしていたら追突されてしまいましたよ」
「そうですか。災難でしたね。診断書には全治二週間って書かれてある筈ですよ」
「必ずそうなんですか?」
「外傷がなければ必ずです。でも、二週間で完治することはないと思いますよ」
「そうですか。病院で待たされるのが嫌いなんですが……」
「一回通院すると慰謝料として六千円貰えます。仕事だと思って通うんですね」
白金の交差点で信号待ちになった。浅野は後方の車が気になって仕方がない。しかし、首を動かしてみるとかなり痛いので、見て確認することは諦めた。
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作品名:出会いは衝撃的に(前半) 作家名:マナーモード