出会いは衝撃的に(前半)
「ちょっと失礼かも知れないけど、美絵さんにストーカーされてた?」
「えへへ、ばれた?」
美絵は照れ笑いをしている。浅野は勿論ジョークとして云ったのだが、美絵の反応は余りにも意外だった。だからどういうことなのか、あとで追求しなければならないだろうと思う。美絵のような絶世の美女が自分を追いかけていたなどということが、現実に起こるはずはない。全く腑に落ちないことである。
「やっと着いたわ。お疲れ様でした」
前方左側に高くそびえる木々に囲まれて見えてきたのは、かなり立派な別荘風の建物である。それはレストランかペンションだと思えなくもないのだが、別荘と考えたほうが妥当だろう。何しろ看板らしきものはいくら目を凝らしても見当たらないのだ。
その建物の前にゆっくりと車が入って行った。車が停止すると浅野はすぐに車から出た。ふと振り返ると、今までに見たこともない息を呑む夕焼けが展開していた。圧巻だった。
「凄いね。空が焼け落ちそうだ」
車を挟んで立つ美絵は、夕焼けの色に染まっている。
「私の気持ちが空に届いたんだわ」
「そうじゃない。美絵さんの気持ちだけじゃない。俺の気持ちでもある」
「そうなの?それについて、あとで教えてほしいわ」
作品名:出会いは衝撃的に(前半) 作家名:マナーモード