出会いは衝撃的に(前半)
間もなくハザードランプを点滅させている二台が、ゆっくりと車を路肩に寄せて後続車に道を譲った。浅野は車から出てドアをロックし、再び後方へ行った。野次馬が居ないのは車が目立って破損していないからだろうと、彼は思った。
「お名前を教えてください」
その若く美しい女性は「ムラタミエです」と応えたあと「村田美絵」とメモに書いて見せた。浅野は達筆さに感心しながらそれを書き写して、
「どこか痛いところはありませんか?」
「大丈夫です。あなたは?」
「首が痛いんですよ」
浅野は顔をしかめ、首に手をやりながら云う。
「そうですか。ごめんなさい。連絡先とお名前を……」
村田美絵の表情は、かなり辛そうだった。浅野は自らの名前と電話番号をゆっくりと云った。こんな形の出会いから恋が始まることはなさそうだと、彼は残念に思った。
その後五分程経ってから青い制服姿の、事故処理係の警察官が数人到着した。最も若く、明晰さを窺わせる一人から怪我の有無と衝突の場所を訊かれた。浅野は首の後ろが痛いのだと云ったあと、少し動いてその場所を示した。
作品名:出会いは衝撃的に(前半) 作家名:マナーモード