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出会いは衝撃的に(前半)

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 容姿としては恵のほうが客観的に云えば優れていただろう。だが、その前に浅野は雅代と出会い、雅代に恋をしていた。彼女には独特の魅力があり、たとえどのようなことがあっても諦めることはできないと、浅野は思っていた。
 雅代の兄の田代泰は読書家で、浅野が読む書物は、常に田代からのいわばお下がりだった。田代は妹が褒めていた本だと云って浅野に書物を供給した。同じ一冊の本を、雅代が手にしたあとで自分も読むことになる。これを数日前は雅代があの華奢な手で持ち、あの美しい眼と、優しい心で読み耽ったのだと思うと、浅野は無上の喜びを感じたものだった。
 午後十一時半。西麻布の首都高速高樹町の入口付近だった。チンピラ風の若い男二人が路肩で手を挙げた。その二人の後方に、風俗店にいそうな雰囲気の安っぽくて派手なミニドレスの若い女二人が立っている。浅野は逃げたい気持ちだが、相当に汚れた服装の人物か、まともに歩けない泥酔者でもなければ、乗車拒否は絶対に許されないことである。
 男の片割れが助手席に座った。後部座席中央の太めの男が怒鳴った。
「おい、三茶へ行け!」
「三茶だよ。わかった?」
「はい。三茶ですね」