出会いは衝撃的に(前半)
「土曜日に電話しますね」
そう云った彼女に対して浅野は、
「わくわくしてますよ。拷問はしませんから、もう、嘘は云わないと約束してください」
「嘘は云ってませんよ。信じてください」
「解りました。じゃあ」
そのあとは美絵のことばかり考えていた。そのせいで道路脇の乗客候補を、何度も見落とした。交差点で信号待ちをしていると、後方から走って来た男に窓を叩かれた。二十分も待っていたのに素通りされたと云い、その中年男は憤慨していた。日曜日はタクシーが少ないので、以前にも同じようなことがあったのを、浅野は思い出した。
空車になるとまた、浅野は美絵を思い出す。彼女は恋愛の経験がないような口ぶりだった。あの魅力的な容姿でありながら、そんなことがあるだろうか。「引く手あまた」とは、彼女のためにあるようなことばではないだろうか。
そんなことを考えているうちに、浅野は高校生だった頃の同級生の一人を思い出した。彼と同性のその同級生は、これといって取り柄のない人間で、クラスの中ではまるで人気がなかった。
「俺ってこれだけの顔なのに、どうしてモテないのかなあ」
そんなことを、平原というその男は口癖のように度々云っていた。確かに彼の顔は精悍な印象で、非常にバランスが取れていて、まるで二枚目俳優のようだった。
そう云った彼女に対して浅野は、
「わくわくしてますよ。拷問はしませんから、もう、嘘は云わないと約束してください」
「嘘は云ってませんよ。信じてください」
「解りました。じゃあ」
そのあとは美絵のことばかり考えていた。そのせいで道路脇の乗客候補を、何度も見落とした。交差点で信号待ちをしていると、後方から走って来た男に窓を叩かれた。二十分も待っていたのに素通りされたと云い、その中年男は憤慨していた。日曜日はタクシーが少ないので、以前にも同じようなことがあったのを、浅野は思い出した。
空車になるとまた、浅野は美絵を思い出す。彼女は恋愛の経験がないような口ぶりだった。あの魅力的な容姿でありながら、そんなことがあるだろうか。「引く手あまた」とは、彼女のためにあるようなことばではないだろうか。
そんなことを考えているうちに、浅野は高校生だった頃の同級生の一人を思い出した。彼と同性のその同級生は、これといって取り柄のない人間で、クラスの中ではまるで人気がなかった。
「俺ってこれだけの顔なのに、どうしてモテないのかなあ」
そんなことを、平原というその男は口癖のように度々云っていた。確かに彼の顔は精悍な印象で、非常にバランスが取れていて、まるで二枚目俳優のようだった。
作品名:出会いは衝撃的に(前半) 作家名:マナーモード