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出会いは衝撃的に(前半)

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「ごめんなさい。休憩していたのね?」
 美絵は前かがみになり、浅野の耳の近くでそう云った。
「休憩は終了です……誕生パーティーですか。あっ。私も今度の日曜日が誕生日ですよ」
「そうなの?わたしも……じゃあ、同じ誕生日なんですね」
「そのようですね!それはビッグニュースです。と、いうことは二週連続で誕生パーティー?」
「わたしねぇ、秘密にしてるの。もう誕生日なんて嬉しくないもの」
「秘密だったのに、私にだけは教えてしまいましたね」
 トンネルから出たので、声を張り上げなくてもよくなった。
「……浅野さん、映画はお好きですか?」
「私はね、映画を観るために生きている人間です。と、いうのは大げさですが、休みの日には最低三本は観ていますよ」
 信号のある交差点で車は停止しようとしている。後続の巨大な四駆の車が気になり、浅野はできるだけ完全に停止するまでの時間を引き伸ばす。あの事故以来、後方を気にする習慣ができてしまっていた。
「映画の券が二枚あるんです」
「それはタイムリー!映画館にも行きたいなぁと思っていたところです。じゃあ、映画館でダブルの誕生日をすごしましょうか」
「付き合っていただけるの?わたしね、嫌われ者だからひとりで行くつもりでした。男性と一緒に映画館へ行くのが、夢だったの」
 浅野は美絵がどんな顔でそんな冗談を云っているのだろうと、興味を覚えた。彼女のような美貌の女性が、男と映画館に入ったことがない筈はない。