出会いは衝撃的に(前半)
事故の相手は衝撃的に、妖艶な女性だった。そして、強烈に魅力的な外見に劣らず、相手のその声も、浅野の心に突き刺さるまでに魅力的だった。
恐らくその女性は、間違えてアクセルペダルを踏んだのではないだろうか。運転者がふてぶてしい男だったなら、口論になったかも知れないと思いながら、浅野はそんな推理をした。新車ではない相手の車は黒の外車で、発売された当初は強烈な馬力を誇っていた車種だった。
浅野は心苦しい想いで警察に通報し、事故の概要と自らの氏名、所属のタクシー会社名を告げた。
「事故の場所はどこですか?」と、落ち着いた男の声が訊く。
浅野も落ち着こうと心がけた。
「目黒駅西口の、目黒三田通りです。私が追突されました」
「目立つものは、近くにありますか?」
「角に銀行があって、その前です」
「お怪我は?」
「首が痛いので病院へ行きたいと思います」
「救急車を手配しましょうか?」
少し迷ってから、浅野はそれを依頼した。
作品名:出会いは衝撃的に(前半) 作家名:マナーモード