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出会いは衝撃的に(前半)

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出会いは衝撃的に




そのとき、運転席の浅野は、交差点で信号が変わるのをやきもきしながら待っていたのだった。
交差点の向こう側でタクシーを待っているらしい中年男の姿に、彼は気づいていた。浅野智明は永遠に赤信号のまま変わらないのではないかという不安と苛立ちを覚えている。希少な客をほかのタクシーに拐われては堪らない。
彼は先月からタクシーの乗務員になったばかりの新人で、年齢はまだ二十代の若さである。
漸く信号の色が青に変わりそうだと思い始めていた彼は、不意の大きな音と共に強烈な衝撃に見舞われた。その刹那、視野一杯に、閃光が炸裂したような気がした。
信号待ちをしているときに追突されたことは、運転免許取得以来初めての経験だった。心臓の鼓動が激しくなっているのを感じながら、彼はハザードランプを点灯し、それまでの売り上げの紙幣をワイシャツのポケットに突っ込んだ。そして、事故報告書を運行記録票の下から抜き取り、小説の文庫本と携帯電話を持って目眩と共に車から出た。交差点の向こうに停車した紅いタクシーがドアを開けたのは、そのときだった。
心配しながら自分の車の後部を見に行くと、意外にも被害はなさそうだった。浅野はその事実にも、乗客を乗せていなかったことにも、感謝したい気持ちだった。追突をした後方の外車も無傷らしい。
 だが、浅野の足はまだ震えている。彼の首と頭と背中には、痛みがあり、全身がしびれている。浅野は覚束ない足取りで後方の加害車両の運転席の横へ移動し、その美しい顔に困惑を浮かべている運転席の女性に向かって云った。
「お互いに車は大丈夫のようですね。でも、携帯電話を使って警察を呼ばせて頂きますよ。事故なんですから……」
「はい。よろしくお願い致します」