出会いは衝撃的に(前半)
「痛かったら、云ってください」
「遠慮しないでガンガンやってください。少しぐらいの痛さは我慢しますよ」
「浅野さんって、優しいんですね。怖い人だったらどうしようって、思っていました」
美絵が泣いているのは、声で判った。
「私のほうは、村田さんに追突されて光栄です。あなたのように素晴らしい女性と出会えて、幸せです」
浅野も胸に熱いものが生じていた。
「わたしのどこが素晴らしいんですか。冗談がきつ過ぎますよ」
浅野は背中に密着する美絵の胸のふくらみを感じている。
「私は先月からタクシーで仕事をしてますけど、ちょうどあの事故の日に、銀座から原宿まで、女優らしき女性を乗せまして、感動したんです」
「誰ですか?」
「名前は判らなかったんですが、リハーサルとか、ロケハンとか、電話で云ってたんで、デビュー後間もない女優なんだろうなあ、と思いました」
「じゃあ、まだ有名じゃない女優さんね」
「でしょうけど、それがねえ、きれいなひとだったんですよ。こんなにきれいなひとがいたのかって、感心しました」
作品名:出会いは衝撃的に(前半) 作家名:マナーモード