盟友シックス! -現実と幻想の狭間で-
第10章 大阪の激戦
「あー… 何というか暇だ」
だいたい呼び出しの電話はこういう時にかかってくるので準備はしていた
だが、俺の心はオロチの言葉で揺れていた
「俺…本当に戦ってていいのかな?」
そこまで考えたところで電話がかかってきたので俺は出かけることにした
「後2頭、今回はどっちだ?」
「大阪だよ 結構近場だね」
「よーしっ!サクッと一狩行くか!」
「ここはホントに大阪か?」
「その筈だけど…」
目の前に広がっていたのは廃墟だった
「何てことしやがる…」
「ギョワァッ!」
「上かっ!」
俺たちがバックステップでその場を離れると上から黒い巨体が降ってきた
「グワァァァッ!」
全身に電気を纏わらせこちらを睨み付けてくる
「やる気か? 受けて立つぜ!」
お互いに睨み合って隙を探していると声が響く
(立ち去れ…ここは竜の都となる場所だ!)
「バカ言うな!ここは天下の台所大阪だぞ!」
(貴様ら人間の都合など関係ない もう決まったことだ)
「だったら俺が中止させてやるよっ!」
(無駄だ すでに先遣部隊が到着しているのだからな)
「何っ!」
一頭でさえ苦戦した竜が多数…表には出すまいと努力したが想像を絶する恐怖が俺を襲う
(フハハハ、怖かろう? ならば抵抗するのをやめて降伏するのだな 今なら命は助けてやろう)
「他人に支配される未来なんて俺はやだね」
(貴様はまだ若い その命今散らすこともなかろう)
「そう思うなら退いてくれよ」
(それはできん相談だ この世界は竜が支配すると決まったのだから)
「その決定をしたのが誰かは知らんがそいつは間違ってると伝えてやれ」
(フッ… 弱い者ほどよく吠えると言うが)
「減らず口は生まれつきなんでねぇ」
お互いに攻める隙が見つからず時間だけが過ぎていく
(貴様は生かしてやっても良いかと思ったが分かり合えぬのなら消すしかあるまい)
「それはこっちだって同じさ それだけ話せるなら分かり合えるかと思ったがな」
(フフフ…面白い奴だ 竜に生まれ変わって会おうぞ!)
竜が突然太いビーム状のブレスを放ってくる
「当たるかよそんなのっ!」
俺が素早く横によける
(甘いなっ!)
突然ブレスが横跳びでもしたかのように軌道変更し俺に襲い掛かる
(忘れたか?我が咆哮は稲妻だ)
そう、ブレスは雷と同じ軌道を描いて飛んだのだ
「しまった!」
すでに飛んだ後の俺はブレスが迫ってくるのをただ見ているしかなかった
「うわぁぁぁぁっ!」
ブレスは俺を飲み込み、そして焼いていった…
ドサッ
俺が意識を取り戻したのは地下牢のような所だった
(まったく…貴様はとことん運のいい奴だ)
目はまだいまいち見えていないが声は聞こえる
そこにいるのは恐らく俺を焼いた竜だろう
(貴様は我らの長ラギア様に気に入られたのだ 感謝するがいい)
竜は牢の扉を閉め立ち去った
「…」
焼かれた痛みと痺れで動けないまま俺は床石から伝わってくる冷気を感じていた
(生きてる…のか?)
俺は自分の生死も理解できていないまま再び意識を失った…
「う、うぅ…」
俺が目を覚ましたのは地下牢だった
起き上がり自分の体があることを確認する
「フフフ、はっはっはっ!俺は生きてるぜーっ!」
何故か笑いが止まらなかった
(何を騒いでいる 騒々しいぞ)
やってきたのは昨日の竜だった
「どうやら竜に生まれ変わるのは早かったらしいからな」
(よく言う、貴様が消し飛ばなかったからラギア様に差し出すことにしたのだ そしてそこでラギア様が気に入られたからお前は生きているのだぞ?)
「ラギアとやらが気に入らなかったら知らないうちに消し飛んでたってことか?」
(そうなるが… まぁ自分の丈夫さとラギア様に感謝するがいい)
そう言って竜が投げ入れたのはこんがりと焼けた肉だった
(喰うといい 毒は入っていない)
「感謝するぜ ちょうど腹が減っていたところだ」
竜は立ち去り俺は肉を食べ始めた
(面白いやつだ… 人間にしておくには惜しいな)
竜がそうつぶやいたことを俺は知らない…
数時間後俺は玉座の間といったところに引き出された
(ほぅ… 生きておったか小僧)
目の前にいたのは青い巨竜だった
「アンタがラギアとやらか」
(ラギア・アークルスという 覚えておけ)
「で、俺に対する要件はなんだ?」
(我らの同志とならんか? 決して悪いようにはせんぞ?)
「断る 俺は裏切りだけは嫌なんでね」
(ならば仲間が全滅してからなら受けるというのか?)
「!? お前何をっ!」
(冗談だ オロチを倒した実力は見どころがある 下手に手は出さんよ)
「その言葉、信じていいんだな?」
(私とて王となる存在だ そこまで卑怯なことはせん)
「…いいだろう だが裏切りの件については断る」
(貴様からは我らと同じような気高さと力強さを感じる 貴様はまだその体に秘められた力に気付いておらんだけなのだぞ?)
「だったらその力を使うのはお前らのためじゃなくて俺の仲間のためだ!」
(それに我を前にして堂々と物を言える、その勇気も買うべき所があると思うが?)
「褒めてもらうのは悪い気はしないが裏切る気はない」
(…交渉決裂か わかった、ゼクレス連れて行け あの部屋にな)
(はっ!御身仰せのままに!)
そう言うと俺をさらった竜は俺を担ぎどこかへと連れて行った
玉座の間の扉が閉まり俺の耳元で竜がつぶやく
(許せ… これも命令だ)
「アンタを恨む気なんてないさ あんたは俺に良くしてくれたからな」
(出来るなら仲間として会いたかったが…)
「それは言いっこなしだ お前の言った通り生まれ変わって会おうぜ」
俺は抵抗することなく揺られていった
謎の研究室のような所でゼクレスは俺を白い竜に引き渡した
(こいつだな? ラギア様が気に入られたのは)
(そうだ あまり乱暴に扱うなよレシアス)
レシアスと呼ばれた白い竜は俺に酸素マスクのようなものを被せ黄緑の液体に放りこんだ
(お前がそんなことを言うなんて珍しいなゼクレス 情でも移ったか?)
(馬鹿を言うな そんなはずなかろう)
液体とガラス越しでも会話が聞こえてくる
(まあいい、始めるぞ)
レシアスはそう言うと大きなレバーを力いっぱい押し下げた
すぐに装置が動き出し俺に電撃が走る
「…!?」
痛みと痺れで身悶えし、意識が遠のいていく中視界の端に映っていたゼクレスの声が聞こえる
(生きろ… お前ならできる)
その言葉を最後に俺は意識を失った…
「何なんだあれは…」
山村の声がする
遠くに見えたのは日本には似つかわしくない西洋風の城だった
「宮寺…あそこにいるの?」
私は宮寺がそこにいることを強く祈った
「まったく…世話の焼ける奴だ 行くぞ」
尾蔵の言葉と共に私たちは城へと歩いて行った
城壁の上…「そいつ」はいつからかそこに立っていた
視界に映っているのはこちらに向かって歩いてくる5体のニンゲン
「そいつ」はニンゲンをどうすればいいかは知っていた…
「グォォォォッ!」
吼え声と共に飛び掛かってきたのは城壁の上にいた赤い竜だった
「やっぱりタダじゃ通してくれないのね…」
私は素早くハンマーを構える
「グァァァッ!」
竜は素早い身のこなしで私に襲い掛かってきた
「くっ!」
作品名:盟友シックス! -現実と幻想の狭間で- 作家名:ぺこ