つがい
「ねぇ~私は何番目に綺麗だった?」
女性の比べる所は美しさ若さなのだ。
龍一はエッという顔をして、私の顔を覗き込んできた。そして
「う~~ん、1番と言ったら勘違いしそうだから2番と言っておこう」
「え~、2番。じゃ、1番は誰だったのよ?」
「う~~ん、1番は高校生の頃の美香だ・・・」
「なによそれ・・喜んでいいのか悪いのか。やっぱり若い時が宝石だよね・・
「あのさ、あの頃に戻れたら美香は何がしたい?」龍一が聞いてきた。
「う~~ん、ビキニ着て海で泳ぎたい」
「え~~っ」笑いながら龍一は私の体形をまじまじと見る。
「俺は17歳の美香に選択を間違えるなよと忠告しに行きたい」
「まあ、ずいぶんね・・」
私はこういう会話をずっとしていたことを思い出した。
もしかしたら、あの時「うん」と言ってたら、ずっとこんな会話を続けられる夫婦でいられただろうか。
いや、やっぱり無理だったのではないかと思った。
こうやって時を経て、二人でいろんな経験をしたからこそ、またあの頃に戻れるんだ・・いや
戻りたいのかもしれない・・
男と女が「つがい」でいられることは運命だけが決めるもの。
また、離れ離れになることは十分ありえる。
ただ、心が通う「つがい」は私の希望だったのかもしれなかった。
妻帯者である龍一はどういう気持ちで私と会ってるのだろうか?
やはり、ただの友達? あの時の延長のまま? また男と女の友情なんて言い出すの?
私は意地悪をしたくなった。
「男女の間でも友情は成立するよね。だからこのままずっと友達でいよう・・・」
昔、龍一が言った言葉そのままを返した。
龍一はドキッとしたのだろうか?
下を向きながらくくっと笑い、何も言わなかった。
どう感じたのだろう?
あの時の「自分の言葉」だと気がついてるんだろうか
ちょっとの沈黙があった。1分だろうか、2分だろうか・・・
龍一は顔を私に向けると
「いやだ・・・」と言った。そして
「男女の間では友情は成立しない。好きだからそばにいたい・・」と言った。
私の目を見て、
「俺は結婚しているけど、美香を好きになってしまった。不倫じゃないと思ってる。純愛なんだ」
龍一は私の肩を抱こうとしたが、私はまたしても彼の告白をするりとかわしてしまった。
「ダメよ、結婚してるじゃない・・・」
言う筈もない言葉が口から出てきた。
それっきり、龍一は黙り私達の同窓会は終わった。
夏の夜の同窓会は一夜の夢と化した。