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海野ごはん
海野ごはん
novelistID. 29750
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つがい

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「また、あなたのお手伝い?」私は悪い気はしなかった。
「ごめん。他に頼める奴いないんだ」
龍一は薄くなった頭髪を掻きながら、頼み込んできた。
「わかった。いいわよ。でも面倒だな」
「このリストに電話してくれるだけでいいからさ。ほら、中年の男性よりやっぱり麗しい女性のほうが男子は喜ぶだろ?」
1枚の紙切れを貰うと20人ほどのリストが綺麗にまとめられていた。
「じゃ、龍一は女子の方に電話するのね」
「ああ、たくさん集まればいいね。他の手配は恭一や研二らとするから」
彼は男友達の名前を告げると、同窓会の予定を話し出した。
「27年ぶりか~みんな変わってるだろうね・・」
「ああ、恭一はもう頭は禿げてるし、研二は糖尿だ」
「え~、そんなに・・。なんだかがっかりすることの方が多かったりして・・」





龍一は家庭のことは言わなかった。いくら聞いても「うん」とか「ああ」とか気のない返事で、できるだけ生活感を隠そうとしていた。でも私もそのほうがよかった。容姿はずいぶん変わったけど、昔のままの龍一がそばにいたからだ。

同級生じゃないと他人を名前で呼ぶことはほとんどない。苗字以外で呼べるのは、やっぱり昔の同級生だけだ。
だから喫茶店で「龍一」「美香」と呼び合うと夫婦のように勘違いされた。

 準備に半年がかかった。現住所の確認、出欠の手紙、案内状、パンフレットなど意外とやることが多かった。その度に龍一は私の家の近くの喫茶店に来て打ち合わせをするのだった。
だんだん、何回も会うごとに私も昔の気持ちが蘇ってきた。
慕う・・というのか、好き・・というのか、あの頃は隆一のそばにいることが心地よかった。
龍一はどうなんだろう?
やはり、今もあの時の「男女間の友情」のままなんだろうか? 
そんな筈はないと思うのだが口に出せなかった。それに、彼は妻帯者なのだ・・・。




作品名:つがい 作家名:海野ごはん