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母から私 私から娘へと ~悲しみの連鎖~

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 家に帰ってからも菜緒の顔を見ていると涙が溢れてきて、どうしようもなかった。菜緒を置いて入院はできない。かと言って連れて入院もできない。養女になんか出したくない。でも……でも……でも……思考はぐるぐる同じ所を回るばかりで、何の答えも出てこない。私は二日間考えて、結局もう一度市役所に電話した。
「すみません。やっぱり養女には出しなくないので、一時預かりってことでお願いしてもらえないでしょうか?」
 藁にも縋る気持ちで頼んでみた。
 そして次の日、市役所の人からの返事が来た。
「大丈夫。一時預かりで了承して貰えましたよ!」と。
 私は大袈裟でなく、本当に神に感謝した。ようやく光が見えた――そんな思いだった。
 それから少し経って、ようやく入院の日が決まった。
 私が自分の身体の異変に気付いてから、すでに半年以上が経っていた。
 いよいよ入院するその日、私は菜緒を連れて田丸さんの家に行った。菜緒の着替えや、その他必要な物を一式揃えて持って。
「一ヶ月だけだから……ね」
 菜緒に何度もそう言い含めて……。
 菜緒はもともとあまり人見知りをしない子だったから、田丸さんの家族にもすぐに打ち解けたようだった。
 お兄ちゃんは菜緒をとっても可愛がってくれているようだったし、もちろん田丸さんご夫婦も、菜緒を実の娘のように世話して下さっていた。時々電話して様子を聞いたり、菜緒と直接話してみても、菜緒が楽しそうにしている様子が手に取るように分かって安心できた。
 入院しているとはいえ、外傷があるわけではないので外出は比較的自由にできたし、冬の寒い時期で菜緒の誕生日も近づいていたので、私は手芸店に行きピンクと白の毛糸と編み針を買ってきて、菜緒のためにジャンパースカートを編んだ。
 菜緒の三歳の誕生日。私が編んで送ったジャンパースカートが届いたと、病院に電話が入った。その日田丸家では、菜緒のために誕生パーティーを開いて下さっているらしくて、菜緒の声も嬉しそうだった。元気そうな菜緒の声を聞いて、私も嬉しくて涙が出そうになった。同時に、一緒にそばにいてお祝いしてあげられないことが悔しくもあり、情けなくもあった。しかし、田丸さんがいて下さって本当に良かった。