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母から私 私から娘へと ~悲しみの連鎖~

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 その日は朝から陣痛らしい痛みを感じ始めたので、準備を整え、電話を入れてから病院に行った。私にとっては初めてで、なおかつ大切な一大イベントの幕開けだ。勇んで、そしてちょっと恐々病院の門をくぐった。
 正確に陣痛と認められてからが長いのなんのって、五分間隔になった辺りからがなかなか進まなくて、もう痛いわ辛いわ、何でもいいから早く出してーと叫びたくなるようだった。私の場合骨盤が小さいから、赤ちゃんの頭がはまり難いとかで、途中で看護婦さんが腰を擦ってくれたのがどれだけありがたいと感じたか。こんな時に母がいてくれたらどんなに心強いか……と、逝ってしまった母を、今更ながらに恨んだりした。でも実際には、生まれた後の方が痛切に母の必要性を感じたのだが……。
 十一時間半の後にようやく生まれた! 元気な女の子だった。
 すぐに手と足の指を数えたが、ちゃんと十本ずつ揃っていた。見る限りどこにも異常のない、五体満足な女の子だった。良かったぁー、と安心した途端、ぐったりと疲れが出た。
 主人の典くんもとっても喜んでくれた。
 体重三八六〇g、身長四十九センチの大きな子で、髪の毛は黒々、ついでに背中の体毛も少し濃い目だった。女の子なのに大丈夫かしら? と、ちょっとだけ不安が過ぎった。顔は、どちらかというと典くん似で可愛い顔をしていた。その時の私の目は多分に、すでに親バカのそれだったかもしれないが。
 最初の一~二日はあんまりおっぱいが出なくて心配したけれど、三日目辺りから徐々に出始めて、退院する頃には十分に出るようになっていった。
 退院するまでの間、典くんは毎日仕事の帰りには病院に寄って、私と娘の顔を見て帰るのが日課になっていた。家に帰っても誰もいないのが淋しいらしくて、いつも面会時間ぎりぎりまで病院にいて、時間になると仕方なく帰って行った。
 そうしてようやく退院の日を迎えた。