小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

母から私 私から娘へと ~悲しみの連鎖~

INDEX|16ページ/46ページ|

次のページ前のページ
 


 懐かしい母の文字で綴られたその手紙には、家を出たいきさつ、そして死のうとしていることなどが書いてあった。
「なぜ? どうして……?」
 どうしても理解できないでいた私に、その夜母から電話がきた。
 私が出ると母は言った。
「圭子ちゃん、ごめんね。お母さん死ぬことにしたの。今一緒にいる人を独りで死なせることができないから、だから一緒に死ぬことにしたの。でもその前に、圭子ちゃんの声だけでも聞きたかった……」
「お母さん死んじゃ嫌だ! お願いだから死なないで!」
 私は泣きながらそう言った。
 母は、私があまりに頼むものだから根負けしたように「分かった」と言った。
「ほんとだね。ほんとに死なないって約束してくれるねっ!」
 なおも食い下がる私に、
「分かったよ。約束する」と言った。
 それなのに………。

 次の日の夜、坂本のおじさんから電話があった。
 母から電話があったことを告げようとすると、その前におじさんが言った。
「お母さんが見つかったよ。でも手遅れだった」
 悲しい知らせだった。
 おじさんが言うには、近所の男の人で、時々母の所へ遊びに来て話をして帰る人がいたらしい。その日もいつものように雑談をしに来たその人が帰る時、母は一緒に家を出たらしい。そしてそのまま帰って来なかった。しかし普段着のまま、サンダルをつっかけ財布も持たずに、多分、ちょっとそこまで送る――そんな気持ちで家を出たのだろう。しかしその人は何かを思い詰めていたらしくて、いつも死にたいと漏らしていたそうだ。
「そういう人にお母さんは引きずられたのだろう」
 おじさんはそう言って電話口で泣いていた。