母から私 私から娘へと ~悲しみの連鎖~
懐かしい母の文字で綴られたその手紙には、家を出たいきさつ、そして死のうとしていることなどが書いてあった。
「なぜ? どうして……?」
どうしても理解できないでいた私に、その夜母から電話がきた。
私が出ると母は言った。
「圭子ちゃん、ごめんね。お母さん死ぬことにしたの。今一緒にいる人を独りで死なせることができないから、だから一緒に死ぬことにしたの。でもその前に、圭子ちゃんの声だけでも聞きたかった……」
「お母さん死んじゃ嫌だ! お願いだから死なないで!」
私は泣きながらそう言った。
母は、私があまりに頼むものだから根負けしたように「分かった」と言った。
「ほんとだね。ほんとに死なないって約束してくれるねっ!」
なおも食い下がる私に、
「分かったよ。約束する」と言った。
それなのに………。
次の日の夜、坂本のおじさんから電話があった。
母から電話があったことを告げようとすると、その前におじさんが言った。
「お母さんが見つかったよ。でも手遅れだった」
悲しい知らせだった。
おじさんが言うには、近所の男の人で、時々母の所へ遊びに来て話をして帰る人がいたらしい。その日もいつものように雑談をしに来たその人が帰る時、母は一緒に家を出たらしい。そしてそのまま帰って来なかった。しかし普段着のまま、サンダルをつっかけ財布も持たずに、多分、ちょっとそこまで送る――そんな気持ちで家を出たのだろう。しかしその人は何かを思い詰めていたらしくて、いつも死にたいと漏らしていたそうだ。
「そういう人にお母さんは引きずられたのだろう」
おじさんはそう言って電話口で泣いていた。
作品名:母から私 私から娘へと ~悲しみの連鎖~ 作家名:ゆうか♪