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母から私 私から娘へと ~悲しみの連鎖~

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 それから間もなく私は荷物をまとめ、軽自動車の屋根にルーフキャリーを付けて、その上に箱に詰めた荷物を積んで山陰線を走り、一人で京都の田舎の親戚の家に行った。二十歳の私には初めての長旅だった。そして淋しい旅であった。
 車のハンドルのすぐ右脇には写真入れがついており、その中で拓斗が笑っていた。その笑顔を見ると、また涙が零れてくる。私の肉体こそ生きてはいたが心は常に拓斗と共にあり、同じ処へ行けない自分の運命(さだめ)が悲しかった。
 ようやく親戚の家に着き、間もなく新しい生活が始まった。新しい仕事を見つけ、新しい同僚ができた。その同僚たちに交際を申し込まれたりもしたが、やはり私の彼はハンドルの右脇にいた。そして時々、母へ手紙を書いた。母は私と会えなくなったことが淋しそうだった。

 そんなある時、母が一緒に暮らしている人から電話があった。私が京都に行ってからまだ数ヶ月の頃のことだった。その人は坂本さんというおじさんで、いわゆる母と内縁関係の人だった。坂本のおじさんは、私のことを可愛がってくれていた。息子はいても娘がいなかったこともあり、実の娘のように接してくれた。ある時などは、エメラルドグリーンの石の入った、可愛い花を連ねたようなデザインのネックレスをプレゼントしてくれた。私はそのネックレスが大のお気に入りで、行く時には必ずそれを付けて行った。その坂本のおじさんが電話などしてきたことは、それまで一度もなかった。
 一体どうしたんだろう? と思いながら電話に出た。
「落ち着いて聞くんだぞ! 実はお母さんがいなくなったんだ。それも着の身着のままで、財布も持たずに出て行ったらしい」
「一体どこへ?」
 驚いてそう尋ねる私に、
「今探してるところだ。また何か分かったら知らせるから、もしそっちに連絡があったら知らせてくれよ」
 そう言って電話が切れた。私は、母に一体何があったんだろうと心配になった。 
 そして翌日、私宛てに母からの手紙が届いた。