小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

センチメンタルシティ

INDEX|15ページ/16ページ|

次のページ前のページ
 


 肇と知り合ったのは、薫よりずっと後だ。だから僕らが三人になったのはつい最近。今年の春くらいだろうか。
 肇との初対面は、ギターを掻き鳴らしている姿だった。若さの手本のように輝いていて、満足そうに歌い上げる肇に、僕は少し憧れを抱いている。肇と出会ってから薫に紹介するのに、長い時間は要らなかった。まるで三人が前世からの友人かのように打ち解け、笑い合い、心地の良い空間が充満する。男性が苦手な薫と上手くやれるか若干心配だったが、事情を上手く咀嚼してくれた様子の肇は、適度な距離を保ちつつ談笑にふけっていた。
 肇は、見た目こそ軽率だが、身だしなみにはきちんと気を遣うし、優しい一面だって持っている。告白されたことはさして多いわけではないと言い張っているが、僕の物差しと肇の物差しとでは多少の誤差があることは否めない。いつも勝手な片想いで終わってしまうと嘆いていた。しかし意外にもここ1年半くらいは交際をしていないらしい。
 今は専門学生として就職に向けた活動をしているようだが、バイトの合間にギターを弾いたりして忙しい毎日のように見える。それでも週末の夜には、三人で集まって酒を飲んだり、朝まで喋り込んだりということもしていた。肇が加わったことにより、より生活に彩りが増えた気がする。実際、薫もそう言っていた。
 そんな肇は、柏木 薫を好きになってしまったのだ。
 けれど薫は肇の気持ちに応えられるのか、保証はない。
 自分自身の恋沙汰でさえうまく処理できないのに、他人の恋愛などに首を突っ込んでいいのだろうか。
 とても明るく、笑顔を絶やさない肇は、薫にとってかなり好印象だと思う。僕にできることは、見守ることくらいだ。

作品名:センチメンタルシティ 作家名:もの