【無幻真天楼第二部・第二回】星が丘
戸を閉めた中島がため息をついてベッドに腰掛けそのまま仰向けに倒れる
気にしてたのにいざ本人を前にすると何も聞けなかった
『久しぶり』の一言も言えず
「っだぁ~;」
ゴロンと転がって今度はうつ伏せになった
「…なんなんだよ…くっそー…;」
自分でもそれがわからなくてモヤモヤする
でもそれは決して嫌な感じではない
のらくらと起き上がった中島が制服を脱ぎ始めた
いつからだろうふとしたときにヨシコが浮かぶようになったのは
今何してんだろう
また我が儘言ってんじゃないかとか
本当にくだらない小さいこと
色々聞きたいと思うようになった
これが【好きになる】ってことなのだろうか
そんな事を悶々と考えながらタンスの奥からTシャツをひっぱりだして袖を通すと部屋を出た
階段を降りて茶の間に入る
「あれ…?」
テーブルの上のオレンジジュースは減っていない
玄関を見に行くと脱ぎっぱなしの自分の靴のとなりにはヨシコの靴
「いる…よな」
呟いて中島が再び茶の間に戻るとソファーの前に回った
「…ヨシコ…?」
クッションを抱きしめて寝息をたてていたヨシコを見て何故かほっとした中島が時計を見ると午後4時半
しばらく時計を見ていた中島が茶の間を出て階段を上り自室から大きめのバスタオルを手に戻るとそれをヨシコにかけた
「…ばーか」
小さく言って台所に向かう
不思議と顔が緩む
「…しゃぁねぇな」
中島が冷蔵庫を開けた
作品名:【無幻真天楼第二部・第二回】星が丘 作家名:島原あゆむ