【無幻真天楼第二部・第二回】星が丘
「空への扉はまだ開けぬか…」
「はい…」
乾闥婆が迦楼羅の前に湯気のたつお茶を置いた
「幸い…上がああなったが天には何もなかったが…空が気になるな」
「そうですね…」
「…おかしなものだな…」
お茶を一口飲んだ迦楼羅が呟く
「今まで【時】の争いの事でしか空を気にしたことはなかったがな…」
そして微かに微笑んだ
「やはり…変わったのだな…ワシらも」
「迦楼羅…」
バタバタバタバタ
キキーィ
バンッ!!!!
「かるらんっ!!!!;」
「ブッ!!;」
血相を変えた阿修羅が勢いよく戸を開けると迦楼羅がお茶を吹き出した
「阿修羅どうしたんですか?;」
「ゲホッゲホッ;」
乾闥婆がむせる迦楼羅の背中をさすりながら尋常じゃない阿修羅に聞いた
「ヨシコ知らんかのっ;」
「吉祥…ですか? いえ…見ていませんが…まさか…」
「…いない…のか?;」
袖口で口をぬぐいながら迦楼羅が聞くと阿修羅が肩を落としながら頷く
「ちょーっと目をはなした隙に…やられたん;」
「まぁ行き先は大体検討はつきますけど」
「まぁな…」
迦楼羅がお茶に口をつけた
「あやつの…吉祥の運命も変わるのだろうかな…」
呟いたあとにお茶を飲み干す
「変えてやりたい…のオライは」
「…そうですね…僕もです」
乾闥婆が阿修羅の前にもお茶を置く
「あんな思い…僕たちだけで終わりにしたいです…」
「だっぱ…」
うつむいた乾闥婆がお茶に映る自分を見て呟いた
作品名:【無幻真天楼第二部・第二回】星が丘 作家名:島原あゆむ