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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【無幻真天楼第二部・第二回】星が丘

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コマイヌを両脇に抱えた京助
「あー…腹減った…;」
もうピークを過ぎてしまったのかさっきまでやかましく鳴いていた腹の虫は静かだった
街灯がない道から横に入ると坂道になっている
この坂を登れば石段があってそれを登れば鳥居があってそれをくぐれば晩飯の待つ我が家
ゆるい坂道に足を進める
何気なく顔をあげて海の方を見れば空と海の境目にポツポツと光る明かりが見えた
たまに視界に入る灯台の明かり
サワサワと風が吹く
「京助?」
黙ったまま動かない京助をイヌが見上げた
呼び掛けても返事はせず京助が歩き出した
「誰かいるんだやな」
「…あ?」
コマがぴくんと鼻を動かし言うと京助がまた足を止めて暗い坂の先に目を向けた
「…矜羯羅の匂いなんだやな」
「矜羯羅? …ってあいつ風邪ひいてなかったか? なんで…」
坂の先から視線をそらさず京助が呟く
「あと緊那羅の匂いもするんだやな」
「緊那羅…?」
「あと…」
イヌも鼻を動かして匂いを嗅ぎいうと京助の足が動いた
少し早足
そして駆け足

石段の下で坂の下を見る緊那羅の肩に乗っていた阿と分の耳がピクッと動く
「駆け足になったある」
阿が言うと緊那羅の足が動いた
緊那羅もまた少し早足がだんだんと駆け足になる
矜羯羅がら借りた羽衣をバサバサと後ろになびかせて坂を下る

途中のゆるいカーブまでくると自分以外の足音が聞こえた
両脇にコマイヌを抱えた京助
両肩に阿分を乗せた緊那羅
「おかえりある」
「ただいまなんだやな」
京助と緊那羅より先にコマと分が言葉を交わした
しばらく黙ったままお互いを見ていた二人
「何固まってるある?」
一向に動かない緊那羅に阿が聞く
「京助ーゴはらへりなんだやなー…」
同じように動かない京助にイヌが訴えた
「…京助」
距離からして聞こえないであろうが緊那羅が京助の名前を小さく呼ぶと自然と緊那羅の顔が綻ぶ
「おかえりだっちゃ」
息を吸って満面の笑みで緊那羅が言った
「…おう」
京助も笑って歩き出す
「また外で待ってたのかよ;」
「ははは;」
緊那羅のところまでくると緊那羅も歩き出した
「どうしたんそれ…矜羯羅のか?」
「あ…うん貸してくれたんだっちゃ」
「そか。あー…腹減ったー…」
京助がため息をつく
「京助」
「あ?」
緊那羅に呼ばれて京助が顔をあげると頭に乗せられた緊那羅の手
「…なんだよ;」
「ううん」
数回撫でたあと緊那羅が手を下ろして笑う
「なんでもないっちゃ」
「…変なやつ;」
京助が首をかしげた
「やっぱりイチャイチャある」
「今始まったことじゃないんだやな」
「そうあるか?」
「そうあるなんだなや」
コマとイヌ、阿と分がそんな二人を見て話す
「あとからイチャイチャ歴史話すんだやな」
「楽しみある」
「…黙れ毛物共;」
キャッキャしている四匹に京助が突っ込んだ