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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【無幻真天楼第二部・第二回】星が丘

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「寒っ…;」
緊那羅が羽衣を羽織ると空を見上げた
青とオレンジが混ざっていた空はいつの間にか紺色になっていくつかの星が光っていた

手が届きそうで届かない

阿修羅との会話を思い出した

もし京助に手が届かなくなったら

もし京助がいなくなったら

ただ考えただけなのにどうしてか苦しくて悲しくなった
さっきまで一緒にいたのに
どうしてこんなに会いたいのか
頭では追いかけたいのに何かが邪魔をしている
「私…やっぱり変だっちゃ…」
石段の下を見た緊那羅が呟いた


「寒いわっ!!;」
「いつもの格好のが寒ぃだろ;…ほらよ」
鍵を閉めた中島がヨシコにジャージを渡した
「無いよりましだろ」
「…おっきい」
「俺んだからな。まさかいくら姉弟だかってミカ姉とかリン姉のタンス開けるわけにいかねぇし。我慢しろ」
ヨシコがジャージに袖を通すと中島に駆け寄った
「いくぞ」
中島が歩き出す
「真っ暗ね」
「あー…まぁな田舎だし」
「静かね」
「あー…まぁ夜だし」
車はもちろん、人も猫すらともすれ違わない道を歩く二人
ツンッと中島の服が引っ張られた
何かと思い中島が後ろを見れば摘ままれていた服
「…なした」
「な…なんでもないわっ!!; そうよなんでもないの!!」
ヨシコが声を荒げて言う
「ふぅん…」
それ以上は何も聞かずに中島がまた歩き出す
摘ままれたままの服
その感じが変わらないのはヨシコがちゃんとそこにいるということ
目が合わないように一瞬ちらっとヨシコの方を見る
思いの外小さなヨシコ
自分にはぴったりのジャージがヨシコにはぶかぶかで肩の縫い目が肘の近くまで下がっている
二人の姉のどちらとも違う女の子
同級生とも違う
なんだか【特別】な存在のような気がする
認めたくないが認めるしかないんだろうと考えると中島がため息をついて足を止めた
「柚汰?」
ぶつかりそうになったヨシコも足を止めると中島に声をかけた
「…こっち」
中島が少し暗い道に入る
街灯はない
いわゆる農道という道をなるべくゆっくり、ヨシコの歩幅に合わせて歩く
ゆるい坂道を登ったところで中島がまた足を止めそして振り返った
「どうしたの?」
「上」
「上?」
「いいから!! …上」
中島が上を指差すとヨシコが上を見る
「…なに…これ…」