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「レイコの青春」 40~最終回

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 「寂しいから、あなたを食事に呼びました。
 大したものはございませんが、今日はこの年寄りの
 ご飯に付き合ったくださいな。」


 「安心したぁ~。
 てっきり私は、何か、お小言があって呼ばれたかと思いました。
 余計な気を回すんじゃないなどと、
 こっぴどく、叱られるものと、覚悟をきめてやってまいりました。
 ご飯を一緒にとは、まったくの想定外です。」



 「安心してはいけません。
 その一件は、食事の後に待ってます。
 だいいち、一度出したお金は、もういいから返すと言っても、
 決して受け取りなんぞは、しませんよ。
 私に、出資金を返そうなんてのは、もっての他の話です。
 一度出したら、あげたも同然のお金です。
 なでしこがある限りは、半永久的に預けておく腹つもりですから。
 それに、予定を越えたからと言って
 もう募金を集めるのは止めましょうとか、
 借入金を返済して、せいせいとしようなどと考えるのは、
 会計責任者としては、まったくもっての
 愚の骨頂です。」



 「駄目ですか?。」


 「当たり前です。
 組織というものを維持するためには、財政力がすべてです。
 財政さえ盤石で有れば、組織というものは
 少々のことでは、絶対に壊れることがありません。
 まずは、なんといっても資金集めです。
 ましてや、勢いのある時にその流れを緩めるなどということは、
 自ら首を絞めるのと同じ事になってしまいます。
 上限などはありません、
 集まり過ぎるほど良しとして出費は最低限にまで削りなさい。
 間違っても、大盤振る舞いなど考えたりしてはいけません。
 集められるだけ集め切って、
 返す時は、なるべくちびちびと返しなさい。
 まったくもって、あんたのやることは、
 危なかしいったら、ありゃしない。
 見ていられません」


 「それでは、本日、 
 私がここに呼ばれた本当のわけは・・・。」


 「財政学の指南に決まっているでしょう。
 私の娘と同じ歳くらいのお嬢さんたちのやる事は、
 実になんというか、危なっかしくて、とても黙って見ていられません。
 厳しく教えたいと思いますので、あなたさえよければ、
 時々、ご飯を食べに来てください。」

 「それでは、私も
 仲町のお母さんと呼んでもいいですか?」



 「はて、ずいぶんと懐かしい呼ばれ方です、、
 どこかでも、そんな風に呼ばれた覚えがありますが・・・
 ははぁ、さては、先日のあの会頭の、禿げ茶瓶ですね。
 他には何か、戯(たわ)けたことなどを
 言っておりませんでしたか。」


 「それだけ、でした。」


 「そうですか。
 正直に全てを話さないところをみると、あなたもしたたかです。
 なかなかに、聡明です。
 やはり、鍛え甲斐がありそうですね。
 さて、前置きはそのくらいにして、食事を頂きましょう。
 冷めてしまいます。」


 思わぬ加勢も得て、
資金調達をなしとげたなでしこは、
その後に開かれた建設委員会で、正式に建設の方針を決定しました。
ここから、財政責任者としての陽子の大活躍がはじまりますが、
躊躇わず常に大ナタを振りまわす、その変わり様に、
関係者一同が一様に驚きます。