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「レイコの青春」 40~最終回

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 一口10000円と言う金額ながら、
八千代姐さんが動き始めたという噂と相まって、
ホステスさんたちの間でこれが、きわめて評判になりました。
もともと、水商売専門とまでいわれながら試行錯誤でその
運営が始まったのが、なでしこ保育園の歴史です。
仲町で働く女性たちにとっては、心強く思える子育ての支援のひとつです。
こうして、支援の輪が日に日に大きく広がりました。


 新たな活路も見出して、再び動き始めた資金集めは
またたく間に目標金額を越え、さらに上に向かって増え続けます。
会計責任者としてやりくりを担当してきた陽子が、
目標を越えたことで一安心をして、八千代姐さんから預かっていた
出資金の返還を考えるようになりました・・・・



 しかし、これがいつのまにやら当の
八千代名姐さんの耳に入り、ついに陽子が、名指しで
仲町の自宅へと呼び出されてしまいます。


 八千代姐さんの自宅は、仲町通りのちょうど中間部に有りました。
黒塗りの板塀に囲まれていて、そこを回りこんでいくと、突きあたりには
格調のある、格子戸の玄関が現れました。
昔はここに検番の看板がかけられていたという、太いひのきの柱が
ドンと陽子を出迎えてくれました。
ほのかに香が焚かれている土間には、愛用の下駄が先を揃えて、
見るからに気持ちよく、かつ綺麗に並んでいました。


 招かれた2階の座敷には
すでに、2人分の昼食の準備が整っています。



 「鰻(うなぎ)か、お寿司でも
 取ろうかとも思いましたが、店屋ものでは野暮だと思い、
 久し振りに、手料理なんぞを作ってみました。
 娘がいたころは、良く料理をしておりましたが、
 一人ぽっちになってしまうと、
 食事も、ろくろく作りません。」


 「あら、八千代お母さんには、娘さんがいらしゃるのですか。」


 「親が言うのもなんですが、
 あなたによく似た、器量良しのひとり娘です。
 しかしどこをどう間違えたのやら、いつまで経ってもお嫁に行かず、
 挙句の果てに今は、ニューヨークとやらで、
 油絵なんぞを書いております。」


 「あらまぁ、ニューヨーク。
 ・・・・それでは、少しお寂しいですね。」