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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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うこん桜の香り

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その時間に患者が自殺したのだ。4人部屋で、カーテンで仕切りがされているだけであるが、ベッドに紐をかけて死んだ。
同室の患者が見つけ、ナースコールで知らせてくれた。
とにかく紐をとき、ドクターに知らせた。
百合の処置に間違いはなかったが、見回りの時間が10分遅れたことが問題になった。
2人で見廻ればそんなことは無かったのだが、百合は自分がうっかりしていたと相手の看護婦をかばった。
責任を感じ、死を決めて、青森の恐山に来た。
異様な景色である。どんよりとした臭いのきつい池、沢山のカラス、通り過ぎてきた杉の木立の緑色が生の世界なら、正にここは死の世界を思わせた。
ここで優しい言葉をかけてくれたのが、稔であった。
その優しさで生きる事を知り、2年の交際を経て結婚したのである。

作品名:うこん桜の香り 作家名:吉葉ひろし