うこん桜の香り
百合は自分自身で女を感じた時であった。
西山であれば、今日身を任せてもいいと思った。
ホテル内の喫茶店で会った。
西山は絵を抱えていた。自分で描いた百合の絵である。
テーブルに座ると、すぐに風呂敷を取った。
「この絵です」
「まぁ綺麗。自分じゃないみたい」
「百合さんそのままです」
「嬉しい」
「この絵とふろくを貰っていただけますか」
「えぇ、喜んでいただきます。ふろくって何です」
「僕です」
「まぁ」
「冗談です」
師走である。クリスマスツリーのイルミネーションが賑やかに点灯していた。
百合と西山は渡良瀬川に架かる鉄橋を歩いていた。