うこん桜の香り
稔はビールを2杯立て続けに呑んだ。
「今まで黙っていて許してくれ、波子は俺が殺したんだ」
「何を言ってるの、実の娘をあなたがなぜ殺すのよ。波子は自殺よ」
「波子が実の子だとまだ言うのか」
「何を言い出すの、波子はあなたの子でしょう」
「おれには子種が無いんだ、看護婦のお前は解ってるだろう」
「調べてもらって言ってるの、波子は誰の子でもなくあなたの子よ、産んだ私が言うのよ」
「嘘だ、信じるものか」
稔は百合の調べたのと言う言葉に、動揺した。確かに医者で調べた訳ではなかった。
本当に自分の子であるなら、どうしようも無いバカ者だ。
百合はなぜ稔がこんなことを言いだしたのか解らなかった。
それよりも、波子の自殺の原因は自分にあるようにも思えたのだ。
百合は自殺の遺伝子を波子が受け継いだような気になっていたのである。